第四十二話 本を読む

セーリングを誰かに習うと良いのでしょうが、なかなか短期間にはいろいろある要素を学ぶ事はできません。それで、そういう解説の本をじっくり読んでみる。経験の無い人が読んでもさっぱり分からない。でも、経験があると、分かってきます。ヨットは最初は習っても、後は独学の要素が強い。
本を読んで、その状況を想像してみる。既に持つ常識とも合わせて考える。自分で考えるというのが大切なのだろうと思います。難しい揚力の理論は別にしても、多くの事柄が、常識で考えれば分かる事がある。

舵はコースを変える以外はできるだけ切らない方が良い。当たり前の事で、舵を切れば水流を変える事で、抵抗になる。シートを出せば、角度が変わるが、形状も変わる。これも考えて見れば当たり前で、シートを出せば下に引く力も減少していくから、セールは上にもあがろうとする。それを元に戻そうと思えば、下から引く力を考えれば良いわけで、バングがある事に気付く。メインのトラベラーはセール形状を変えないで、角度だけ、トラベラーの範囲内に限っては角度を変える事ができる。シートを出さない限り、ブームが上に持ち上がる事は無いから。

ヨットに乗り始めて、ジブシートとメインシートのみの操作でセーリングしてくる。そういう事に慣れてきたら、本をじっくり読んでみるのをお奨めします。全く経験の無い時に読むと全く分からないものの、経験を少し積んでから読むとかなり理解できる。全てをいっぺんに熟読するのは面倒なので、例えば、メインセールに関する事だけ最初に読む。セールはどのようにカットされているか?それが分かればバックステーアジャスターの意味が分かる。ラフテンション、ドラフト、ツウィスト、軽風時のトリミング、強風時、等々、とりあえず知識を増やしておく。そうすると、実際のセーリングの時に、本で読んだ知識を思い出す。そして、それを実行するには、どうしたら良いかを思い出す。で、やってみる。

こういう事の繰り返しで、だんだん頭に入っていた知識が体に馴染む。失敗もあれば、うまくいく事もある。それを何年もかかって遊ぶ。遊びながら学ぶ。学びながら遊ぶ。セーリングはこの繰り返し。各部の知識が増え、実践し、今度はそれが総合的に絡み合い、最後は自分で考える。いろんな事がわかってくると、当然面白くなる。分かって、実践して、うまく走れると面白くなる。野球で、ピッチャーやって、カーブが投げれるようになると面白くなる。それでバッターを三振に取ると気持ち良い。それと何ら変わらない。豊富な知識と長い経験を要するセーリングは、結局は独学が物を言う。その為には、本を読む事は大切かと思います。誰かが、何年にも渡って教えてくれるなら別ですが、実際はそうはいかない。

知識が増えると、ベテランの一言でも、ピンと来る。だんだんと知らなかった事でも、常識で考えていくと分かる事もある。そうなってくると、自然に総合的にいろんな所に気付く。小さな事にも気付くようになる。そして、何故かという疑問も沸いて来る。次はその疑問について学ぶ。謎はどんどん解けて、自分のものになる。セーリングはそうやって遊ぶと面白いのでは、と思います。

例え、本を完全に暗記する迄に至ったとしても、やはり本は本でしかない。知識は知識でしかない。しかしながら、知識はその技術をマスターしていく上において、おおいなる手助けにはなる。効率の良い進化となる。ハウツー本はテクニックを教えてくれますが、その結果うまくなるにしても、その先の結果が重要で、結局、セーリングしてどんな感じになるのか?各過程での感じをその都度楽しむ、この感じが最も重要なんだろうと思います。これは本には書いて無い。

基本的な知識が身に付いたら、後は実践しながら、ああでも無い、こうでも無いとやりながら進んでいく過程が面白いのだろうと思います。ですから、一人でシートだけ使ってセーリングに慣れたら、その先、もっと学んでいくかどうかが分かれ道かな?学べば、もっと面白くなると思います。知る事は喜びなり、と誰かが言ってましたね。でも、注意した方が良いのは、本の知識が完全だとは思わない。自分の常識とも照らし合わせて、理解していく事も必要かなと思います。そうすれば、知識は自分のものになると思います。

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