第五十一話 ボートスワッピング

海外ではついにボートスワッピングが始まった。ある会社が立ち上げたこのビジネスは、世界中から登録者を集め、オーナーが互いに自分のヨットを貸し出すというものです。それで、登録者(オーナー)は世界中の登録された中から、自分の行きたい場所にあるヨットを借り受ける事ができる。
細かい規定や保険や何かの整備はあるのでしょうが、簡単に言えばそういう事です。それで、長い旅をしてそこに行かなくても、飛行機で飛んで、そこでセーリングができる。チャーター会社から借りると費用も高い。いろんな所で、いろんなヨットに乗れるという仕組みです。

このシステムは実は今年から始まったばかり、今のところ世界中で78件の登録があり、最も多いのはヨーロッパの51件。アジアはまだありません。これがもし本格化すると、飛行機でカリブや地中海に飛んで、そこでセーリングを楽しむ事ができる。実に面白いシステムです。残念ながら、日本からの登録は無い。

世界には魅力的なセーリングがスポットがあり、できれば美しい海で、そういうセーリングをしたい。しかし、自分の居場所がそうで無い限り、そこまでヨットで行くのは大変です。世界を回るクルージングを楽しむ方も大勢おられますが、中にはその過程はいいから、できればそこに手っ取り早く飛んで、気軽にそこでデイセーリングができれば最高ですね。同じ事を考えた事はありますが、なかなか難しい。

自分のヨットを自分の居場所のできるだけ近くにおきたいのが普通です。でも、考え方を変えれば、日本国内であっても、国内のどこかに、以前沖縄に置きませんか、とお誘いした事がありますが、そういう具合に好きな場所に置く事もできる。そういう事が珍しく無くなった時、また、日本にチャーターヨットは殆どありませんが、どこかに飛んで、そこでチャーターして遊ぶ事が珍しく無くなった時、もっと進んで、こういうスワッピングが出てくるのかもしれません。

もう、10年以上前、ヨーロッパのチャーター会社が日本の市場調査に来ていました。日本でのチャータービジネスは可能か、という調査です。残念ながら、諦めて帰ってしまいました。ひとつは市場規模の問題が最も大きいと思いますが、その他、天候による運行日数の可能性などもあるようです。

日本ではヨットは贅沢品です。そういう意識がある。多分ですが、欧米ではヨット遊びは贅沢なのでは無く、一部贅沢なヨットがあるという事だと思います。庶民的なヨットがあり、超高級ヨットもあり、みんなが贅沢なのでは無い。もし、格安の係留費用で、維持も自分でする。そうなると、ヨットもピンキリですから、決して贅沢どころか、安い遊びにもなります。贅沢しようと思えばきり無くできますし、安くしようと思えばそれもできる。ただ、ちゃんとしたマリーナに置きますと、係留費が高い。田舎の方へ行けば安いところもたくさんあるんですが。でも、ヨットやろうとする人は都会に多い。

ヨット遊びが贅沢なのではありません。贅沢に遊ぶ方法はありますが。アメリカで20フィート以下のヨットが1万艇以上毎年売れています。この数値は日本の全てのヨットの数に等しい。そこにはトレーラーで自宅に持って帰れるお国事情もありますが、安い保管料で維持できるなら、日本でももっと気軽にヨットを楽しむ事ができる。ヨット本体の問題よりも維持費の問題でしょう。以前あった、フィッシャリーナの話はどうなったのでしょうか?漁港の半分のスペースをレジャー用に開放してくれたら、事情は劇的に変わるのかもしれません。

ボートスワッピングは進んだ国だから出てくる発想でしょう。日本はまだその域には無い。それで、まずは自分がどこに居ようと、好きな場所にヨットを保管する。こういう所からスタートです。それが珍しく無くなった時、ボートスワッピングも考えられるようになる。では、まず、沖縄にあなたのヨットを置いてみませんか?

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