第五十四話 全てはグッドフィーリングの為に

我々の目的は突き詰めれば、全てグッドフィーリングを得たいという事に尽きる。生存が脅かされる時はそんな事は言ってられないが、それがある程度確保されると、次に得たいものはグッドフィーリングになる。

ヨットはどんな特性を持っているか?ステータスとしてのヨット、美しいヨットは鑑賞にもたえる。そのヨットでセーリングしたら、どんな感覚か、旅をしたらどんなに楽しいだろうか?あらゆる物に対して、あらゆる想像を駆使して、いかなるグッドフィーリングがそこにあるか。究極的にほしいのは、物では無く、グッドフィーリングでしょう。という事は最も価値の高いものは、物では無く、目には見えないフィーリングにある。但し、このフィーリングは永遠では無く、一瞬のうちに現れては消え、値段のつけようも無い。不確かなもの、だからこそ、そのフィーリングの前の、物に集中せざをを得ない。

物に関わる時、想像力が必要になります。これで何ができるか、その行為からどんなフィーリングを得られるか、持つとどんな感覚か、それらは想像力次第、それが夢にもなる。夢はどんなグッドフィーリングを得たいのかという具体的な想像という事になる。しかし、想像は想像であり、実体験とは違う。手に入れたら、と想像するのと、実際に手に入れた実体験とは異なる事も多い。それでも、想像と実体験を繰り返しながら、常に新たなグッドフィーリングを求める。体験によって得た知識やフィーリングは、次の想像の材料になる。最初から豊かな想像力を発揮できるものではない。

ヨットを所有する事でグッドフィーリングを得る事もできる。ステータスとしての力は強い。それに美しさはさらにそのフィーリングを増強する。人によって感覚は異なるが、だいたいは共通していて、美しいものは、誰が見ても美しい。ヨットを所有するだけでもすごいのに、そのヨットが美しいときたら、もうたまりません。ここには大きなグッドフィーリングがある。

所有するだけでは、そのうちあまりカッコ良さはキープできなくなるので、実際に動かしたい。そのヨットが持つ特性をもう少し突っ込んでみると、乗って、そのフィーリングを得るという行為が出てくる。誰かを招待したものの、カッコ悪い姿は見せられない。これはバッドフィーリングになる。よって、少し練習を密かにやる必要があります。それも大変な事では無く、マリーナからの出し入れと、基本的なセーリングができれば、それだけで、カッコ良さはキープできる。これで、所有という事とステータスとしてはキープできる。

さて、ここから先は、自分のグッドフィーリングをもっと突っ込んで行きたくなるかどうかです。乗れば、何らかのフィーリングを得る事になります。そのフィーリングはヨットによって異なる。どんなグッドフィーリングを得たいのかによって、それに合うヨットというのがある。帆走重視とクルージング重視、それによってヨットは異なる。滅多に乗らないなら、そんな気も沸いてこないでしょうが、乗れば乗るほどに、どんなフィーリングを味わいたいかが明確になってくる。体験と知識が重なり、新たな想像が生まれるからです。もっと違うグッドフィーリングが得たくなる。

帆走性能の良いヨットで走るセーリングは格別のフィーリングを与えてくれます。舵のわずかな操作、シート類の操作、いろんな感覚が生まれる。しかしながら、ヨット操作で目に見えて解るスピードの変化は劇的では無い。でも、それがフィーリングとしては、かなり大きく感じられる。この繊細な感覚にグッドフィーリングを見出そうとする。誰でも、快走を経験すると、快感を覚える。ですから、快走は誰にでもグッドフィーリングを与える事になります。しかし、偶然では無く、これを故意に快走を造ろうとすると、それなり必要がある。艇の性能、自分の技術、そして求める意識、想像力です。

一方、旅を求める方は多い。何故なら、GPSなる装置が開発され、より行きやすくなったせいだろうと思います。ひょっとして、この中にもセーリングの方に合う方も大勢おられるかもしれません。しかし、セーリングは曖昧で、GPSに匹敵するような装置は無い。もう少しシートを引けとか、リリースしろとか、そういう指示をしてくれる装置は無い。全てはオーナーの感覚次第かもしれません。実に曖昧ですし、正解もわからない。GPSはスポット的に到着地点を示し、明確ですが、セーリングはそうもいかない。同じヨットでも、この二つは大きく違う。

GPSほどでは無いにしろ、セーリング装置としては、風向風速計とスピード計、この二つが、セーリングを助けてくれる事は間違い無い。

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