第六十話 進化

ヨットにおける今後の進化とは?実際のセーリングを考える時、最もみなさんが苦労されるのが、マリーナの出し入れだろうと思います。それが30フィートであろうと、狭いマリーナならば、やはり強風時には苦労がつきまとう。そうなると、バウスラスターというのがありますが、30フィートに?と思うとちょっと恥ずかしさもある。でも、それで楽に出し入れができるようになるなら、その恩恵は大きいと思います。過去において、奇異に感じたものが現代では普通に捉えられる事は多いものです。最初は、何でも奇異に思える。

さらにもう一歩進化しますと、エンジンとバウスラスターがコンピューターで連動し、コクピットにはジョイスティクが1本。このジョイスティックで、コンピュターが制御し、マリーナからの出し入れが簡単になる。実は、これはモーターボートでは既にあります。ボートの横歩きなんて芸当ができます。これが将来において一般化しますと、少なくともマリーナの出し入れに苦労は不要、サイズに関係なくできるようになる。

さて、マリーナから出て、セーリングをする。既に電動ウィンチがあるので、楽に上げる事ができる。トリミングもボタンひとつで可能、これ以上自動化しますと、今度はセーリングの面白味に欠けてきますので、このぐらいが良い。それで、セーリング終了して、セールを下ろす。セールをたたむのが面倒と言われる方もおられる。すると、メインファーラーの電動化?既にあります。今はコストの問題でしょう。電動ウィンチどころか、電動で、シートを巻いたり、出したりもできる。でも、やっぱりコストの問題です。

さて、その他はと言いますと、ジェネカーをどう扱うかでしょうね。ファーラーまでありますが、上げた
ままというわけにはいかず、終わったらセールを下ろす必要がある。これが上げたままならもっと楽になりますね。それとバウスプリットの問題です。どれにでも設置できて、簡単で、強固なバウスプリット、もちろん見かけも良く、そういうのができると良いのですが。

困る所に需要があり、発明がある。きっと誰かが、いつかは解決してくれるだろうと思います。でも、やり過ぎは面白味を無くす可能性もあるので、便利になれば何でも良いというわけには行きません。遊びの要素はたっぷりと残す必要がある。で、それは採用する側の問題です。どこまで採用し、どれは不要かは、何を遊ぶかにもよります。

現代の科学をもってすれば、お金さえかければかなりいろんな事は可能ですが、面白く無いと誰もヨットに乗らなくなるでしょう。すると、何が面白いのか?そこをきちんとおさえておく必要はあろうかと思います。オール電動の、オール自動化で、快走してもちっとも面白くは無い。自分で快走を作り出すところに面白さがあると思います。人がするから、人によってやり方が異なるし、うまいへたもある。だからこそ面白い。良い性能のヨットは、快走を作り出す事が比較的容易かもしれない。他のヨットよりレベルの高い快走を作り出す事ができる。でも、それはヨットにオーナーの手が加わる事によって成されるわけで、いかに手を加えるかが面白さの秘訣となります。

進化して、楽になって、高いレベルの快走を味わえる。進化は素晴らしいもんです。でも、それを完成させるのはオーナーであります。楽になった分、もっと遊ぶ事ができなければなりません。そういう進化である事を願います。

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