第八十話 眺めてみれば
| 稼動率がどうこうとか、シングルハンドがどうこう、デイセーラー、スポーツ、外洋、クルージング、キャビン、レース、これらがどうこうという意見は一杯あります。全てにはメリットがあり、デメリットがある。もっと細かく言えば、メインが、ジブが、バングがと言います。ひとつひとつにコメントをつければ、いろいろある。 でも、全部忘れてしまおう。そうすれば、ただ海に浮かぶヨットがあり、それだけで気持ち良い。何かをしようとか、何かを達成しようとか、どこかに行こうとか、そんな事は全て忘れて、ただヨットに乗って出て見る。いかに速くとかも考えずに、ただ走ってみる。それだけで、気持ちが良い。 いろんな理屈を考えますが、ふと、そんな感じが浮かんでくる事があります。何も考えずに、全体を眺めて見れば、いろんな事は小さな事、どれにしてもたいした事は無いと思う事があります。そういう時はただ流すようにセーリングをするのが一番。大きいだの、小さいだの、たいした事じゃ無い。ただ、セーリングを楽しむのも悪く無い。 稼動率が低いので、特に平日とかなりますと、誰でも出ていない事があります。そんな時は自分だけ、ひとりで広い海を独占する事になる。なんて気持ちが良いんでしょう。 風があっても、無くても、なんて気持ちが良いんでしょう。そんな時はトップリグだのフラクショナルだの、大きいの小さいの、モダンとかクラシックとか、ブランドとか、みんなどうでも良くなります。ただ、ひとり海に浮かんで、走っているだけで、気持ちは開放される。回りに誰も居ないなんて事は日常に殆どあり得ない。そんな気持ちの良い日には、細々した事は忘れて、ただ走ってみる。 こんな日がたまにあっても良い。特筆すべき事は何も無いが、ただ気持ちが開放されて、良い気分。それだけで充分です。その日の気分に合わせてセーリングをする。集中した時、ぼ〜っとする時、仲間と乗る時、誰かと二人で乗る時、いろんな気分があって、いろんな乗り方がある。それで良いとも思います。 うまいとか、へたとか、そんな次元の低い事は考えない。それで何も考えずに乗れると、これが最も気分が良い。穏やかで、平和で、そして気分が良い。これに越した事は無い。本当は目指すはこれかもしれません。そして、その日の為に、別な日は集中して乗る、レベルを上げる、どこか遠くを目指す。これらはひょっとして、みんなこの日の為にあるのかもしれません。 夏はこんな気分にはなかなかなれません。暑くでたまらない。それで、最も良いのは秋でしょうね。 おじいさんもおばあさんも、熟年も、若きお兄ちゃんもお姉ちゃんも、たまには、何も考えずにセーリングしてみたらいかが？全てが馬鹿馬鹿しくなるほど、良い気分になれるかもしれません？海にひとりでセーリングする自分を眺めてみましょう。なんて贅沢なひとときかもしれません。 |