第八十三話 目の保養

オランダ製でトリンテラという外洋艇があります。それが日本に1艇あります。オーナーからの依頼で売りたいとの事で、見に行ってきました。噂には聞いていましたが、素晴らしいヨット、超高級艇、多分スワンより上でしょう。アルミ製です。

ヨットにはプロダクション艇とカスタム艇があります。カスタム艇のうち、ハルとデッキだけが決まっていて、後はカスタム的にオーナーの希望で造るセミカスタムというのもあります。プロダクション艇は我々が一般的に目にする殆どがそうで、スワンもそのうちのひとつ。セミカスタムとしては、有名なヒンクリー、アルデン、モーリスなんかもそうです。このトリンテラもそのうちのひとつで、オーナーは凝りに凝って注文したようです。カスタムの難しい所は、その一艇だけの為に、いろんな事をしないといけない事でしょう。それも、ヨットとして、造船所として、不具合になるような物は、たとえオーナーからの注文でも受けられない。つまり性能を向上させる物は良いが、落とすものは受けられない。さらに、それに対する、何でも受けられる技術力も相当高くないとできません。

トリンテラはアルミです。アルミは電蝕を心配しますが、さすがにその配慮は細かいところまで行き届いていました。別種の金属同士が直接接触しない配慮がなされ、全く電蝕はありませんでした。
船体はいかにも強靭そうでしたし、造りも素晴らしかった。隣に、これも高価で有名な謀ヨットがありましたが、全体の雰囲気からして、かもし出す雰囲気と言いますか、周りの空気が違って感じられます。多分、同サイズヨットの安い方のプロダクション艇なら、4〜5倍の価格だったようです。

 

写真ではなかなか伝わらないのが残念ですが、久しぶりに目の保養になった感じです。やっぱり上には上があるもんです。バウバルピットの先端に丸い物がついてますが、これはカメラなんですね。室内のテレビに、外部が写しだされます。夜間でもバッチリ見える。スターンにもついてます。

油圧で動くジブのファーリングシステム。油圧ですから、ドラムのロープなんかはありません。メインはファーラーを嫌って、その代わり、油圧式のハリヤードウィンチでした。ジブシートウィンチも油圧ですから、簡単に操作ができます。それで、オーナーはこのヨットをシングルハンドだそうです。
GPS、全ての計器は3箇所、キャビン内のナビゲーション、パイロットハウス、それにコクピットです。まあ、ここまで良く装備したもんだと感心しました。それに今でも非常に手入れが行き届き、きれいなもんでした。久々の目の保養になりました。ちなみに、ギャレーなんかの扉のロックのボタンとか金メッキなんです。これにすると、古くなっても黒くならない。いや〜すごいヨットでした。

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