第二十四話 広〜いキャビン

広いキャビンのソファーに腰をゆったりと下ろす。やっぱりキャビンが広いと良いなと思います。これなら人数が増えてもゆっくりと食事ができるし、何人も泊まる事もできる。それに冷蔵庫もあるし、さすがに風呂は無いものの、温水でのシャワーも浴びる事ができる。最近ではエアコン付きも多くなってきたし、マリーナに居るなら、発電機無しでもエアコンを回せるので、煩くない。

ギャレーを見れば大きなシンク、もちろんお湯も出る。ガスコンロ、オーブン、電子レンジ、テレビにDVD,音楽を聴くCDもある。そんなヨットも最近では珍しくも無い。これならみんなのあこがれになるのも良く解ります。

でも、これは別荘と同じです。別荘を別荘として使う分には何ら問題は無い。でも、別荘を別荘として、なかなか使いきれないのが現実です。これは動く別荘ですという見方もありますが、確かにそういう使い方ができる方もおられますが、多くの場合、やはり使いきれない。

別荘がほしいなら、どこかに別荘を持って、別にヨットはヨットとしてのセーリングを楽しんだ方が良いのではと思います。最近ですが、デイセーラーは大きなヨットを持って、セカンドボートとしての存在は有だなという見方をされた方がおられますが、それも有かもしれませんが、本当の別荘を持って、その存在の他にデイセーラーという考え方もある。或いは、別荘持たなくても、自分の家があるわけで、それをファーストにするなら、デイセーラーをセカンドと見る方法もある。どこかで寛ぎたいなら、温泉とかの旅館に泊まった方が快適で、お風呂もあれば、ご馳走もあり、至れりつくせりになる。そういう考え方もできます。

寛ぎをヨットで無くて、自宅、別荘、旅館やホテルに求めるなら、快走セーリングを得る事ができる。ヨットにはその方が面白いんじゃないかと思います。メリハリがあります。自宅で快適で、ホテルで快適で、ヨットまで同じ状況を造る必要性があるのか?セーリングを犠牲にしてまでです。どこ行っても多少は違いますが、どこでも快適ばかりを求めてもしょうがない。自宅は快適に、旅先も快適が必要ですが、自宅とは違うホスピタリティーがある。もっと快適という意味です。そんなにどこもが快適なら、ヨットぐらいスポーツと位置づけて、快適さよりも快走を求めた方が、ヨットはヨットらしく活きるのではないでしょうか?メリハリがきちんとできるので、世界が変わる。気持ちも変わります。キャビンが快適になればなるほど、セーリングをしなくなるのでは?キャビンにも快適を求めたお陰で、気持ちがセーリングにシフトしないのかもしれません。

ヨットも広いキャビンで、快適でも良い。でも、ヨットはセーリングする為に手に入れたと考えたらどうでしょうか?だいたいあまり使われていないのが現実なようです。週末のマリーナ、殆ど誰もヨットに泊まっていない。どこかに行っても、旅館に泊まる。そういう方も少なくありません。コンロもお湯ぐらいしか沸かした事無いし、オーブンなんて使った事が無い。

日常にヨットを楽しむ場合、装備は最低限で、シンプルでも良いような気がします。その方がメインテナンスも楽だし、掃除も楽。なにしろ煩わしくない。そんなシンプルなヨットだからこそ、セーリングを気軽に楽しめるかもしれません。

今売られている殆どのヨットには、いろんな装備が積まれています。それも各社、これでもかと競争しているぐらいです。そこに差別化を図ろうということです。でも、それが本当に必要だろうか?
その為に、他の面白さを無くしていないか?そういう事を一度考えてみた方が良いのではないかと思う次第です。一体、ヨットに対して何を求めているのか?ヨットの何が面白いのか?大抵は、大勢の流れとは違うところに本当の面白さがある。

最初は本質に沿って発展していきますが、ある程度に達すると、その周辺が増えてきて、そこに目が行くようになる。或いは、そういう風な見方にさせられていきます。それで、気がつかないうちに、本質的なところはなおざりにされていき、そこに気がつかないで大勢が流れていきます。それで、本質が全く影響を受けないならそれでも良いのでしょうが、本質が削がれてしまうと、これはちょっとと思います。その本質以外がそれなりに、新たな面白さを提供してくれるなら別ですが。
そうでも無いなら、もう一度遊び方を考え直してはいかがでしょうか?

ヨットはセーリングが面白い?キャビンが面白い?旅が面白い?何が面白いのでしょうか?もちろん、ひとそれぞれ自分の答えを持っているはずですから、そこを確認してみる事も悪くは無いと思います。

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