第三十一話 遊び的思考

享楽的な事だけが遊びではありませんね。好奇心をもって、物事を見る事こそが遊びの真髄ではないかと思います。そこに新しい何かが発見できたら、その面白さは享楽的な遊びとは雲泥の差であり、感動さえもするかもしれません。チャレンジして、達成する喜び、これも遊び心のなせる業ではないでしょうか?人間には、必ず遊び心が必要かと思います。生きるエネルギーみたいなものです。

それを養うのは何か?理屈と懲罰と、報酬にのみで生きる時、そういう遊び心が失われる。否、失われるのでは無く、忘れてしまう。理論の中でしか、感じ得ない遊び心は、かなり限定されたものになるのでは無いでしょうか?成功に対する喜びは、遊び心だと思います。しかし、ある一定の限られた中でしか経験しないなら、その遊び心は柔軟性に欠け、限定されてくる。

そこで、必要な事は、限定されない遊び心、理屈から離れ、損得を抜きにして、報酬だけから得られる喜びでは無く、もっと広い意味での喜びを感じる遊び心を養う。それが潤いをもたらし、いわゆる人はパンのみに生きるわけでは無いという事になると思います。

報酬の無い遊び、損得の無い遊び、そこでいろいろチャレンジ精神を大なり小なり発揮して、そこから得られるいろいろな感情を味わう事こそが、必要ではないかと思います。それをしようと思うのが遊び心です。

そういう事に、ヨットはピッタリ当てはまりますね。損も得も無いし、やって賞金稼ぐわけでも無く、無駄と言えば無駄だし、でも、そこには恐怖もあれば、スリルもあり、感動もあり、寒さ、暑さ、快適さとは、本来縁遠い。それを敢えて受け入れるところに遊び心がある。

本当は、これを快適にせんが為に、いろんな快適装備を積み込む度に、本来の遊びが失われているのかもしれません。それらをいかに工夫し、創造するかに遊びの感動があるのかもしれません。シンプルが良いというのは、そういう事かもしれません。快適が良いなら、家から出無い方が良い。でも退屈だから出かけます。できれば、少しだけチャレンジしながら、快適の中に90%ぐらいはつかっている。そう思いますが、それでは遊びはたいした事は無い。

わかっちゃいるけど、やめられない。遊びを10%から15%にチャレンジ精神を増やして、少しづつ増やして、快適さが減少した事を、そのまま感じて、チャレンジしてみてはどうでしょうか?たいした事ではありません。雨が降ったら、ただ濡れましょうという程度です。傘をさすのが常識ですが、それをしないで、そのまま濡れてみましょう。スプレーを浴びたら濡れましょう。それが当たり前です。嫌だと思うから避けたくなる。ならば嫌だと思わなければ良い。濡れた感じを味わえます。コクピットにドジャーがあれば便利です。これに反対するものではありませんが、無くて濡れても良いじゃないか、と考えられないか?これも遊び心ではないか、と思う次第です。

結局は、ヨットが面白いのでは無く、遊び心をどれだけ持っているかにかかっている。その自分の遊び心を、見える形で体験し、リアルに感じて、味わう。こんな感じ、あんな感じと味わう事こそが、遊びなのではないでしょうか?そして、いろんな感じをたくさん味わうほどに、豊かな感性が生まれる。それこそが、豊かな人生、充足感に繋がるのではないか?だから、正しいとされる事だけする、雨が降ったら傘をさすのは常識ですが、時に、遊びでは濡れてみる事が必要なような気がします。

ヨットの稼動率が少ないのは今に始まった事ではありません、昔からそうです。それは、ひょっとしたら、遊びにおいても、雨が降ったら傘をさすという常識を取り入れ過ぎたせいではないか?陸上とは違う別の世界を味わいたい。そういう非日常性も、傘をさす式では半減しないだろうか?傘をさすのが悪いわけじゃない。雨が降ったら、何の躊躇も無く、自動的に傘をさすというところに問題がありはしないか?傘が無いのが自動的に不快と感じるところです?何か不都合と感じる事があったら、それに即座に対応するのが常識です。でも、それを敢えて、受け入れて見るとどうなるか?子供の頃、学校帰りに雨がどしゃ降り、それでびしょびしょになって帰る。それでも何か面白かったような気がします。

そう考え直して、セーリングをもう一度感じてみます。結局は、あるがままに、味わう事ができるなら、それが最も面白いのかもしれません。その対応を考えるのが進歩でしょうが、やり過ぎには注意を。世の中、どんどん便利になっていきます。便利になればなるほど、不都合さは増幅され、不快に思うようになります。5分電車が遅れただけで、ストレスになります。より快適にする事は良い事なのでしょうが、我々はどんどん限定されていく。

どれだけ不都合を受け入れられるか、我慢では無く、遊び心で。それが多い方が、面白さは多くなるのではないかと思います。より多くの、いろんな感じを味わう事ができるからです。キャビンがでかいだの、あれもこれもついてるだの、そんな事は本当はたいした事では無い。気に入ったヨットなら、何でも良い。どんなセーリんグの仕方しようが、勝手です。面白いように、思いつきでも、何でも良い。是非、自分の遊び心はどこにあるのか、相談しながら、どんどん遊んで、味わって、それがエネルギーになると思います。バッテリーのチャージみたいなもんかと思います。

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