第六十七話 The Summer of 94 Daysails

アメリカのセールマガジンに掲載された、あるオーナーの記事をご紹介いたします。

以下、記事内容
桟橋に弱り果てる他のヨットの中で、何度も何度もセーリングに出かけたある人の話です。

昨年の夏、ミシガンのマリーナを歩いていた時に気付いた事は、ウィークエンドに出ているヨットは本当に少ないという事でした。まして、毎週水曜の夜に開かれるレースには、もっと少ない。多くのヨット、特に大きなクルージングボートは何週間もその桟橋にじっとしている。それらのヨットはオーナーに救いを求めているかのように見えた。それは運動をしない馬のようなもの、気の毒にさえ思えた。もちろん、そういうヨットに投資したオーナーに言う事では無いが。

一方、私のように、幸運に恵まれ、何度もヨットを出している人達も居る。私は出る度に、記録をつけています。走った距離、その時の最速のスピード、走った時間、その他記録に値する事は何でも記録しています。あるシーズンの終わりに、その記録を見てみますと、ワンシーズンで1,120マイル走っていた事が解りました。毎週水曜に行われるレースに参加した記録は、合計で300マイル。という事は、残りの800マイルはどこから来たのか?

デイセーリング。私の意見では、純粋にセーリングを楽しむのは、幸運にも仕事から引退しているのであれば、2時間から4時間程度のデイセーリングを、午後からとかできる。或いは、まだ仕事をしているにしても、こういう短時間なら、夕方とか、どこかに時間が取れるものです。そして、バースから100フィートも離れれば、セールを上げられる。

美しいデイセーラーを出して、セーリングするシーンを想像してください。白波が少し立ち始める頃、英国人はそういうシーンを草原に羊と表現するそうだが。クローズで走って、流れる波を見、スピードはだいたい見かけの風の半分くらいか。どこにでも行けるような、最高の気分。嫌々、ベストでは無い。確かに、良い気分で、最高のセーリングをしている。でも、もっとという気分にもなる。

ワンシーズンに何回セーリングしたと思います?調べてみたら、94回だった。4月中旬から10月の半ばまでの半年間に94回乗った事になる。 それで走った距離は1,100マイル。平均すると、1回のセーリングが約12マイル弱程度だが、ちょっとやり過ぎ?確かに、そうかもしれません。半年間で94回という事は、2日に1回は乗った事になる。

一方、引退時期に来ると、座ってるだけで心地良いわけが無い。もし、引退後、20年と考えたら、残りは7,300日しか無い。この地の冷たいシーズンを考えると、セーリングシーズンはその半分になる。という事は3,650日だ。これは10年間分という事になる。もし幸運ならばですが。だから、次のシーズンにおいても、もっと考えなくちゃ。オーバーワークは慎むかもしれないけど。

4年前の2005年にアレリオン28の購入を考え、その事を妻に話しました。妻はすぐに友人を呼んで、思い留ませるよう説得してほしいと頼んだわけです。その友人はしばらく考えて、こう言いました。”ナンシー、俺達は長い間死んでたんだ。彼にボートをやらせてくれ”

2009年のシーズンに向かって、ヨットの準備をする。そして自分に約束してほしい。今年はやるぞと。今年は50回は乗るぞと。繰り返してもらいたい。

以上が、その記事の内容です。仕事を引退して、そして見つけたセーリングライフです。年齢の記載はありませんが、多分、内容から推測して、引退してから、しばらく経った年齢のようです。70歳ぐらいか?引退後に、何もする事が無く、友人の言葉を借りれば、長い間死んでたようなもの、それがどういうわけか、セーリングに惹かれるようになって、スタートを切り、そこから、半年間で94回も乗るようになったわけです。友人の言葉が心に響きます。俺達は長い間死んでたんだ。

こうやってセーリングが生きがいになる方もおられる。考え方、気持ちの持ちよう、そういう事が大きく人生を左右するんですね。楽しさも面白さも、全ては気持ち次第という事でしょうか。

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