第七十四話 常識?
人に相談しますと、相談された方は一般論、常識を踏まえたところで、返事をします。当然であります。しかし、その常識、一般論は正しいのか?最近は特にそういう疑問がわいてきます。 ヨットの一般論は何か?たくさんの存在するヨットを見れば解ります。動かないヨットが一般化しています。つまりは、一般と同じにすると動かない?そういう可能性があるという事です。誰もがクルージングを言い、それにはキャビンが大きいとか、エンジンはこう、プロペラはこう、艤装はこう。所謂一般論を言います。 でも、その一般的なヨットが、桟橋に繋がれたまま、じっとしているという常識は何なのか? 常識に従うと、自分もその仲間入りになる可能性があると見て良いのではないでしょうか?何故、そうなのかと考えますと、日本人の一般的スタイルと、欧米人の一般的スタイルが同じでは無いという事では無いでしょうか?欧米人は家族で一緒に行動する事が多い、欧米人はリゾート地で、一日中読書していたりする。欧米人はヨットに頻繁に泊まる。欧米人はマリーナでヨットを動かさなくても、ずっと過ごす事ができる。それらを見ますと、決して日本人のスタイルでは無いような気がします。もちろん、絶対ではありませんが。 ヨットでやってきたあるオーストラリア人、土曜の昼間にセーリングを楽しんでいた日本のヨットマンが、みんな夕方には帰ってしまった。それを見て、何故? 明日は日曜なのに、何故みんな帰ってしまうんだ? 土曜の夜は、のんびりして、ヨットに泊まらないのは何故か?そう聞かれた事があります。これが日本人のスタイルなのです。 本当は誰かに相談しても意味があまり無いのかもしれません。一般の使われ方、否、使われなさが一般なんですから、一般論としてしか言いようの無い相談された方は、そう言うしか無いのかもしれません。そうしますと、これから始める方は、どうすれば良いのか?ここが難しいところですね。 当然ながら、一般を踏まえたうえで、私はデイセーリングを中心にお奨めします。無理にではありません。家族で乗りたいと言われれば否定はしません。しかし、一般はこうですという話はします。 その私の一般論を、自分のスタイルと比べてどうかという事を検討して頂きたいと思います。買って頂くのは大歓迎ですが、購入後には、どんどん使って、どういう形であれ、堪能していただきたいと思います。売ったヨットが、最初だけで、後は使われなくなるというのは、やはり寂しいものです。 一般論を言われる方々の気持ちは良く解ります。考え方の相違に過ぎません。その方はその使い方が最も良いと思っておられるでしょうし、楽しんでおられるのでしょう。でも、どうもそこに危険を感じます。クルージングという言葉で、セーリングがあまり重視されない一般論。それが本当に面白いのなら、何故にこんなに動かないヨットが多いのか?そして、しょっちゅう動いているヨットの使われ方は、セーリングです。という事は、もっとセーリングした方が良い。それが常識になりはしないのか?でも、多くの人達はそこを見ていません。やっぱりクルージングなのです。しかも、滅多に使う事の無いクルージングなのです。欧米人スタイルになれる人は良い。でも、多くはそうはならない。 何故、そうなるのか?それは多分、これまでの常識的な意識にあると思います。ヨットはレースをするか、クルージングをするか?このふたつに分離してきました。そして多くはレースはしない。という事はクルージングというジャンルに入れられてしまいます。レースをしないでも、セーリングを楽しむ事はあまり考えられなかったのではないか?セーリング自体を楽しむ方法もあるはずです。 実際、セーリングしていても、意識があまりセーリングには専心していなかった。でも、ちょっと意識してセーリング自体を楽しんでみるのも面白いと思います。 ですから、デイセーリングを薦めています。それが解決のひとつの方法になると信じています。フォールディングプロペラを薦めたら、違う人は固定ペラの方が良いと言われます。ジブとメインのファーラー、広いコクピットと広いキャビン、冷蔵庫に温水、コクピットにもシャワーがあったり。ドジャーにビミニトップに、もちろん、メインとトラベラーはキャビン天井の上。それにオートパイロットとGPSが必需品。確かに、これらはクルージングの旅という意味では良いかもしれません。でも、どれだけの方々が、そういう旅をされるのか?デイクルージングとしても、それだけ必要か?あっても良いんです。でも、一日の事を考えますと、クルージングよりもセーリングの方が面白く無いか? もし、そうなら、そういうクルージング仕様は、セーリングにとってはあまり面白くは無い。 いつかは、どこかへの旅をと考える方は多いと思います。もちろん、それはそれで結構なのですが、今それが実行できないのなら、今できる事を楽しんだ方が良いと思います。クルージング艇でも、今できるデイセーリングを実行する方が良いのでははいでしょうか?つまり、意識をクルージングの旅から、今はセーリングにシフトして、将来できるようになったら、クルージングにシフトする。その時々で、できる事に専心する事が、楽しむ最も良い方法ではないかと思います。 |