第七十七話 セーリングの魅力

今更、という感もありますが。何にしても、乗り物を自由自在に乗りこなすという感覚は面白さを感じさせます。子供の頃、自転車を練習して、乗れるようになりますと、そこには別の世界が広がります。誰でも、昔体験した事です。それがやがては車を乗りこなすようになって、また別の世界を見ます。それだけでは無く、スキーが滑れるようになるとか、スケートとか、スケボーとか、サーフィンとか、それぞれにその独自の世界があり、それができると、他の人では解らない世界を手に入れる事になります。

ヨットを手に入れ、それに乗れるようになりますと、単に乗れるという事実のみの留まらず、その世界を手に入れる事になります。その世界は陸上では無いだけに、全く別世界を見る事ができる。さらに、セーリングを乗りこなせると、もっと上のレベルに到達したような、これまた別世界です。結局、セーリングの魅力は、多く方々、殆どの方々が知らないであろう別世界を自分の中に日常的に取り入れる事ができる事では無いでしょうか?世界が違ってくる。車なら殆どの人達が手にした世界ですが、ヨットとなりますと、全く違います。

我々は生きている間に、いろんな世界を手に入れるわけですが、ひとつ世界を取り入れますと、その後におおいに影響します。その世界を知っているか、いないかは、良い悪いは別として、生きている世界がいくつあるかによって、広がりが異なります。単に、ヨットに乗れるか乗れないか、乗った事があるかとか、そういう単純さでは無く、考えて見れば、生きる世界がひとつ増える事を意味します。そういう意味では、とっても大事な事ではないでしょうか?

寿命が80年としたら、誰でも手に入れる一般的な日常の世界があります。それにしても、各人各様なのですが、それにプラス、人によっていろんな世界を手に入れる事になります。そのひとつひとつの世界は非常に貴重だろうと思います。世界をひとつ増やす事、80年という限定された時間に、いくつ世界を持つかは、人生の味わいをもたらす事になります。ただ増やせば良いという物でもなく、ひとつひとつの世界を深く知る事も味わいの深さという面において、また違ったものになります。寿命というものが無ければ、これらはたいした意味を持たなくなるかもしれませんが、限られた時間であるからこそ、その世界の味わいは人生そのものを左右する事になるのではないでしょうか。

まずは、セーリングそのものがどうこうという事もありますが、その前に、その世界を手に入れたという事実は、非常に大きなものだと思います。そのうえで、セーリングの味わいを深めていくと、そこには、また深い味わい、世界が広がる。そういう風に考えれば、大きな意味を持ちます。誰でも持てる世界では無い。特にセーリングというのは、ほんの一部の方々が得られる貴重な世界です。当たり前のように乗りますが、そういう世界を持ったという事は有難い事であります。80年の歴史の中に、それがあるか、無いか?

家族や家庭という世界、仕事の世界、誰も不思議には思いませんが、これら一般的に誰でも持つであろう世界の他に、いろんな世界を各人が持つ事になりますが、それらひとつひとつの世界は独立せず、互いに関連、影響しあいながら、全体として、各個人のひとつの大きな世界を持ちます。その大きな世界の中に、またいろんな世界があり、それらが、我々の人生そのものではないでしょうか?どの世界も限られた時間の中では貴重であり、ひとつつまらない世界を持つと、つまらないと思ってしまうと、それは他の世界にも影響を及ぼす。これは、世界を持つ事は重要ではありますが、どの世界で何をするかという事も重要であり、尚且つ、どんな気持ちで行うかも重要です。行動は他の世界には影響を与えないかもしれませんが、気持ちは他の世界にも影響を与えるからです。

ヨットをやるというのは、世界をひとつ増やし、セーリングをするという事もその世界の広がりを意味する。そういう意味では、やるかやらないか、やるとしたら、どういう具合にするのか、そして、それを存分に楽しめるか否か?そういうこの世界の質と言っても良いと思いますが、それをどうするかは人生にとって、たかが遊びであっても、非常に重要かと思います。貴重と言っても良い。

セーリングの魅力というのは、セーリングの世界を意味し、セールで走る感覚、緊張と緩和、自然、海、そういうもの全部をさし、それをすれば誰でも同じ面白さを味わえるというものでは無く、やる側次第という事、どこに魅力を見つけるかは人次第という事になります。ヨットの世界にはたくさんの世界がまたあり、その世界をどれだけみつけていけるかに、かかっているのかもしれません。
ある人は爽やかさを見出し、ある人はスリルを見出し、またある人はのんびり感を見出す。つまりは、その世界はどんな感覚を見出せるかという事になり、ヨットにはあらゆる感覚があると思います。ある世界において、その独自の感覚を得るという事は人生の豊かさを意味するのではないかと思います。それは多いに感じた方が、より豊かさを感じられるようになるのではないでしょうか?
ヨットの魅力とは、そのヨットから得られる感じ、独特の感じが増える事を意味するかと思います。
どんな感じを持つかは自由です。しかし、どうせやるなら、たくさんの感じを得た方が豊かでしょう。

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