第六十三話 楽しくなんか無い

誰でも、ヨットに楽しさを想像し、それを求めてヨットを始めます。しかし、冷静になって考えてみますと、ヨットなんてものは楽しい事は少ない。いや、真剣に取り組むと、ヨットで無くても、何でも楽しい事は少ない事に気づきます。それはどこまでやるかによって違ってくるかと思います。

昨今、マラソンをする人は実に多い。日本のあっちこっちで、マラソン大会が開催されますと、大勢の市民が参加されます。マラソン?楽しいのか?42.195kmを走るのですから、楽しいはずは無い。

スポーツをします。スポーツをしますと、体を鍛え、肉体はしんどいのに、それでもやる。ちっとも楽しくは無い。

絵を描きます。陶芸をします。楽器を習う。みんな、本気でやるなら、悩み、苦しみが出てくる。それが本気という事でしょう。楽しくなんか無いと思う次第です。

では、何故、それでもやるのか?それはきっと面白いからです。体を鍛えたり、悩んだり、それでも面白さを感じるからこそ、長く続ける事ができる。面白さは楽しさを超えているわけですね。それが無いと本気にはなれない。

何でもそうですが、楽しさを求めつつも、本気になってきますと、いろいろ悩んだりするわけですが、もうその時には、その悩みなどが嫌だとか、そんな意識さえ表れない。本人は端で見る程、苦しいわけじゃない。面白いのです。超えて、進んでいくのが面白いと感じていますから、楽しさだけを求めているわけでは無い事になります。

ヨットでも、本気にならないと、楽しくない事が面白さには変わらないと思います。そうだとすれば、楽しい場面はそう多くは無いので、風が無いと乗れない、風が強いと乗れない。そういう事が多くなる。あるオーナー、昔のエピソードですが、奥さんに、今日は風が無いから、今日は風が強すぎるから、と言ったところ、奥さんは一言、”それじゃ、あんた、いつ乗るの?” これにはまいったとオーナーが言われていました。確かに、風が無いなら走れないし、風が強すぎても危険がある。でも、なんか、この奥さんの言葉はしみますね。

そこで、ヨットは楽しくないけれども、面白いんだと考えて下さい。そういう決心がついたら、本気モードに入ったら、ヨットは面白くなる。同じセーリングでも、見方が変わります。そうやって進めば、いろんな場面を楽しいと楽しくないに分けなくなります。 

考えてみれば、人生だって同じ。政治、経済、事件、ニュースには事欠かない。楽しくなんかない。
しかし、見方によっては面白い。人生を降りる事はできませんから、誰だって真剣です。そうなりますと、考え方によっては面白い人生になる。ヨットは降りる事ができます。ですから、本気の人と本気で無い人が居ます。でも、ヨットはいつでも降りる事ができるのですから、ちょっと本気出して、面白さを味わってみたらどうでしょうか?楽しさを超えた世界です。

それには、スプレー浴びても、雨が降ってきても、嫌だと思わない事でしょうね。事実だけに対応する。できれば面白がる。すると、やがては何て事は無くなる?何か楽しくない事が発生すると、それに対して何か対策を取ります。或いは、そこから立ち去るか。それが普通ではあるのですが、でも、それが本当に不快なのか?何でも発生すれば、それを防ぐ何かを考えますが、果たして、それで良いのか?どうもやり過ぎて、面白さを無くしてしまう事もあるのではないかと感じます。

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