第79話 各艇のコンセプト

ここでは当社取り扱い艇のコンセプトを見ながら、いろいろなヨットのコンセプトを見る参考に
していただければと思います。ここではノルディックフォーク25を取り上げます。

ノルディックフォーク25はデンマークで建造されていますが、オリジナルは60年前に木造で
建造されました。昔のヨットは外洋性を持つのが当然とされていましたので、それなりの頑丈
さを持ち、しかもレースを楽しむ為に建造されたヨットでした。今の感覚からしてレーサーとは
言いがたいのですが、当時ではそうだったのです。

現代ではFRPにて建造するようになりました。今の視点で見るに、7.64mという船体の長さ
25フィートになりますが、これが1,960kg(4,350ポンド)という排水量を持っています。
水線長は6.0m(19.68フィート)です。これから計算しますと、水線長に対する重量比は
254となり、中排水量の真中ぐらいです。代表的な中排水量艇と言う事ができます。軽過ぎ
ず、重過ぎずというところでしょうか。

 排水量(ポンド)÷2,240
(0.01x水線長(フィート))3乗

次に、セール面積を見ます。セール面積は24u(258平方フィート)、排水量は4,350ポンド
これから計算しますと、15という数値を得ます。この値はまあまあというところでしょうか、これも
小さ過ぎず、でも大きくは無いというところです。

セール面積(平方フィート)÷(排水量÷64)2/3乗

この二つの数値を見ますと、典型的なクルージング艇、中の中という値です。そして幅ですが、
今の新しいデザインとは違って2.2mと狭い、新しいデザインの同じサイズのヨットと幅を比較
してみて下さい。それにロングキールです。狭い幅は水線以下の形状においてフラットでは無く
深くなります。おまけにロングキールですから鋭角の角度を持っている。ということは波に対して
刺さるような動作をしますから波に叩かずソフトな乗り心地である事がわかります。でも、この
鋭角な船底形状はフラットな形状に比べて、浮力がつきにくく、走るにはよりパワーを必要とし
ます。つまりモーターボートなら、同じスピードを得るのにより大きなエンジンを必要とするわけ
です。それで、大きなセールを持っているかと言えば、中程度。そして、船体のデザインが非常に
低く造られ、バラストは1,040kg、これは全体の53%を占めます。

これで解る事は、微風では走らない、今の新しいデザインにはかなわない。でも風が強くなってい
くに従って本領を発揮し、重心の低さ、バラスト比の高さから見て、かなりの強風でもリーフをする
必要性が無く、全体重心の低さ、復元性の高さが大きな面積のセールを維持できるという事がわ
かります。おまけに頑丈な船体を持っている。強風に速いヨットとも言えます。他のヨットが強風で
リーフしている時に、フルセールでどんどん走れる、その代わり、微風時にはおいていかれます。

それでこのヨットのコンセプトは頑丈で、波にソフトですから叩かず、強風に強い。それにロングキー
ルですから直進性に優れていますが、逆に微妙な、センシティブな舵操作はできない。という事
は外洋クルージング艇という性格を持っています。でも、キャビンの広さ、荷物などの収納スペース
の容量から言って、今では外洋艇とは呼ばないでしょう。サイズから言っても、デイセーリングから
1,2泊程度、それもシングルハンドか3、4人までが快適にセーリングできる限度ではないでしょう
か。このヨットをお奨めしたいオーナーのコンセプトは、気軽にセーリングにできる事、ロングクルージン
グよりショートクルージングを目的に、時化ても強いこと、キャビンでゆったり過ごしたいというより、安全
な時化に強いセーリングを楽しみたいという方、そういう方にお奨めです。

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