第三十話 力加減の進化

ヨットの今の姿は、もうだいたい完成されてきたのかなと思います。この先、全く新しい形をしたヨットが出無いとは言い切れませんが、今の形はそれで美しいし、良いんではないかと思います。それで、今後の発展は、どうなるのか、何が望まれるのかと考えますと、操作上の力加減をどうするかになって行くのではないかと思います。

でかいヨットには電動や油圧アシストが普通になってきましたが、でも、もう一歩期待したい事があります。電動ウィンチはボタンひとつでシートを巻き上げる事ができます。ウィンチよっては、シートを出すにもボタンでできるのもあります。スーパーヨットなんかには採用されていますね。それに、一部の超高級デイセーラーにも採用されています。

  電動ウィンチ
  壁にあるスイッチで、ハイスピード、ロース
  ピードで巻き上げる事ができます。










  BAMAR社のキャプティブウィンチ
  電動/油圧で、スイッチで巻く事もリリース
  も可能です。
  主にスーパーヨットに使われています。











期待するもう一歩先というのは、例えば、ブロックでテークルを組んで、人間の手で引く力を軽減できますが、これと同じ事をパワーアシストで、できないかという事です。ウィンチを回す必要も無く、片手で引いたり出したりできる方が面白い。かと言って、ブロックでテークルを組んでというのも限界があります。特にでっかいヨットには難しくなります。それに、使うロープの役目によってはテークルを組め無い部分もあります。

そこで、電動を使おうが、油圧を使おうが構いませんが、小さなヨットを操船するのと同じように、でっかいヨットも、舵を片手に、もう一本の手で、シートの出し入れをウィンチを使わずに、引いたり出したりできるようになれば、これは面白いのではないかと思います。どういう風にできるかは解りませんが、例えば、、ブロックを一個介して、そのブロック自体にそういう仕組みが施してあるとか?
簡単では無いですね〜。でも、期待したい。

電動アシストの自転車というのがありますが、坂道を登る時に、電動パワーでペダルをこぐ足の力を軽減してくれますから、坂道もスイスイ登れます。この場合、ペダルをこがないで良いのとは、ちょっと違います。それと同じように、50フィートのヨットだろうが、ウィンチ無しでも、手で全て操作ができるようになったら、面白いんじゃないかと思います。

50フィートもありますとセールはでかいし重い。それでも、手だけで、トップまでスルスル上げる事ができたら、ジブシートもメインシートも、全部片手で引いたりもできたら、自分の手で引くという感触が残ります。それも面白さのひとつではないかと思います。理想的には、スイッチで、力を2分の1とか3分の1とか、いろいろ設定ができて、自分の体力に合わせて設定を変える事ができれば良いですね。これはブロックのテークルと同じ考え方です。

ブロックでテークルを組んで力の軽減をやりますと、軽減された分だけより長くロープを引かなければなりませんが、このアイデアの場合は、そういう事が無いし、力の軽減率の調整によっては、微妙な力加減もできる。

昨今のロープにも、細くても強度があるロープが出てきましたので、例えば、50フィートオーバーのようなヨットには、かつては太いロープを使っていたのが、細くても同じかそれ以上の強度を持つロープを使う事ができます。すると、自分の手のサイズにフィットする太さのロープを使って、先ほどのパワーアシストのシステムがあれば、でかいヨットも実に楽に動かせるだけでは無く、スイッチとは違う、自分の手で引くという感触も得られます。この事は、セーリングを楽しむという点を重視するなら、実に面白くなると思うのですが?

シートの場合、引くのみならず、放すという方向もあるわけですから、先ほどの電動アシストの自転車と同じというわけにはいかないかもしれませんが、でも可能性はある。ある一定の力で引かないと、シートが出るという仕組み。これも、その場で力加減が調整できるスイッチなんかあると良いかな。

そうなりますと、かよわい女性でも、子供でも、ウィンチなんか使わずに引く事も出す事もできる。マッチョマンで無くても、舵を持ったまま片手で操作が簡単にできる。年寄りになってもできる。これって、かなり良いような気がするんですが。

力加減が調整できますから、ストッパーなんかも要らなくなる。まあ、全部カムクリート程度でOKで、片手ポンとはずして、片手でポンとかませる事ができる。でも、こうなると、そのパワーは常に作動状態になりますから、そこにもちょっと問題が出るかな?まあ、今、そこまで考え無くても良いですね。

電動ウィンチも良いんですが、贅沢を言うなら、やはり何分の1とかに軽減するにしても、セーリングを楽しむにおいては、引く感触というのを残したい。その方が面白いと思うんです。両方使えるならもっと良いんでしょうが。贅沢ですね。でも考えるだけならただですし。それに、いつかは実現するかもしれません。その時まで生きていたいですね。是非、味わってみたい。すると、その頃には、50フィートサイズのヨットでも、シングルハンドでスイスイとセーリングを楽しめるかもしれませんね〜。当然ながら、他の部分でも進化しているでしょうから。

ついでながら、モーターボートの世界では、既にエンジンのドライブが左右に動くようになっています。これで何ができるかと言いますと、従来はプロペラの方向が真っ直ぐ後ろに水流を押し出し、舵でコントロールしていたわけですが、ドライブ自体が動きますと、バックの舵効きが非常に良くなる。モーターボートで2基掛けエンジンですと、バウスラスターとのコンビネーションで、コンピューター制御され、ボートが真横に動いたりします。

  ZEUS DRIVE
  下部のドライブ部分が左右に動きます。

  ヨットにもこういうドライブがつきますと、マリーナからの出し入れが
  非常にやり易くなるでしょう。おまけにバウスラスターなんかも取り入
  でかいヨットも、シングルで楽々出し入れというのも夢じゃない。

  そうしますと、未来は、でっかいヨットだろうが、シングルで、セーリング
  も楽しく遊ぶ事ができる。という事は、誰とでも遊ぶ事ができますね。
  クルー不足時代、ならば、クルーなんか不要だ。とこうなります。

次へ       目次へ