第六十六話 デイセーラーの意義
アレリオン28が始めて建造されたのが1990年だったと思いますが、当時、デイセーラーと言えば、小さな20フィート前後か以下ぐらいのヨットでしかありませんでした。それがアレリオンによって、デイセーラーの概念は変わってしまいます。 と言いましても、アメリカですぐにアレリオンが受け入れられたわけでは無かったようです。私がアレリオンを知ったのが約15,6年前。始めてアレリオンを見た時の印象は鮮烈でした。これまでには無かったヨットだったからです。 低い重心にする為に、キャビンは小さく、ですから水面からデッキ迄の高さ、フリーボードが低く、それにセールはセルフタッキングジブ。それを補うように大き目のメインセールが配置され、桟橋に繋がれた姿は、ポンツーンのちょっと上ぐらいにデッキがある。おまけにライフラインも無かった。それに何と言っても美しいクラシックなライン。それでいて、水線から以下はモダンなデザイン。こんなヨットは無かったのです。 初期のアレリオン28.基本的デザインは 変りませんが、現在ではジブブームが設置 され、キールの形状も変りました。 それにエンジンが当時はシャフト式。 当時、セールはおろか、エンジンさえも オプションだったんです。 セーリングするには面白い。どうせキャビンなんか、当時でもそんなに使われていなかったし、それならこういうヨットの方が絶対面白い。そう思って、早速造船所にコンタクトを取りました。当時、全米で販売を一手に行っていたのがゲーリーホイトさん。シングルラインリーフの考案者でもあり、後にアレリオンのジブブームを考案した人。 彼曰く、やめた方が良い、もっと普通のヨットをやった方が売りやすいですよという事でした。アメリカでもニッチ市場として、そうそう売れていたわけでも無かったようでした。それでも、当時、これは絶対日本に紹介したいと思っていたので、日本での販売を開始した次第です。 他の業者にパンフレットを見せて、意見を聞いたりしたのですが、これはセーリングが好きな人じゃないとね、という意見。??? セーリングが嫌いなヨット乗りが居るの? アメリカの方では、その後、アレリオンに火がついたというのか、このヨットのコンセプトが受け入れられ、どんどん売れるようになります。どんどんと言っても、年間数十という単位ですが、それが積もって、今日でアレリオン28のモデルで400艇を越えています。 一方、日本では販売開始しても、全く売れない。問い合わせはありましたが、全く売れなかった。でも、徐々に問い合わせだけは増えてきました。でも、それでも全く売れない。そんな日々が何年も続きました。ただ、問い合わせだけは増え続ける。それだけが救い。それがようやく日本第一号艇が関東に売れ、それからは、ポツポツと売れるようになってきました。やっとです。 その間に、アメリカではデイセーラーに人気が高まり、他の造船所からも同じコンセプトのヨットが建造され、アレリオンにも他のモデルが建造されるに至ります。今日では、アメリカ以外、ヨーロッパでも建造されるようになってきました。欧米では、既に確固たる地位を得ています。 従来のデイセーラーとは違う、このアレリオンのデイセーラーコンセプトはある意味をもって迎えられるようになりました。セーリングを楽しみたいとした時、そう遠くへクルージングに行く事も無ければ、その暇も無いという方々にとって、クルージング艇では物足りない。しかし、レーサークルーザーではクルーを要する。クルー不足の事もあったわけですが、このアレリオンなら、高い帆走性能をシングルで簡単に味わう事ができたわけです。 つまり、セーリングを楽しむ為にはふたつ。クルーが居るなら、レーサークルーザー、それをシングルで可能にしたのがアレリオンというわけです。そこに今日のデイセーラーの意義があります。それを理解した人達が、アレリオンに集まります。その集まった人達を見て、他の造船所もデイセーラーを建造し始める。アレリオンにならうように、セルフタッキングジブと大きなメインセール。そして、高いスタビリテーを持たせて、ノーライフライン。全部そうです。さらに、アレリオンにも他のモデルが投入されていきます。かくて、欧米では、こういうデイセーラーが確固とした地位を占めるに至ります。 今日のデイセーラーの存在意義は、高い帆走性能をシングルで味わえるという事です。それに小さいと言えども、キャビン無いわけじゃ無し。1泊か2泊程度なら充分にクルージングにも使える。 欧米ではさらに発展して、もっとスピードを追及していくタイプと、サイズをでかくして、デイセーラーという名前はあるものの、セーリングを楽しみ、もっと遠い距離へのクルージングをも楽しめるようにバリエーションが増えてきました。 日本では、まだまだ、セーリング自体を楽しもうというスポーツ的感覚が乏しく、セーリングを強調すると、レースをイメージしてしまいます。そうでは無く、もっと気軽にセーリングを楽しもうというのが、このデイセーラーの最大の意義ではないかと思います。セーリングは何もレーサーだけがするわけでは無い。クルージング派の方々も、現実は、その多くの場合でデイセーリングをされています。それなら、デイセーラーはもっと面白いセーリングを提供できますよという意義であります。 現在のアレリオン28 キール形状の変更とセールドライブの エンジン。それに何と言っても、ジブブーム が設置されています。 ジブブームはゲーリーホイトさんの特許。 誰でも、初心者でも簡単にセーリングを 楽しめて、同時にベテランの方には、繊細 なセーリングをも提供する。 日本第一号艇のオーナー曰く、アレリオンは 初心者とベテランヨットマン向きとか。 このオーナー、大学ヨット部でならし、その後 もレースを続けてこられた方です。 セーリングが面白いと思わせてくれます。 ヨットの面白さは、もちろんクルージングもありますが、セーリングという本来の遊びを見直してみてはいかがでしょうか?セーリングはレースをする為だけにあるわけではありません。セーリングによってのみ味わえるフィーリングがあります。しかも、デイセーラーのセーリングはまた一味も二味も違うフィーリングなのです。それに、シングルを可能にしたデイセーラーの意義はそこにあります。もっと気軽にセーリングを!!!!!! アレリオン28は現在、430艇目を建造中。さて、どこまで行くのやら。この夏、日本にやってきます。 これまでクルージング一辺倒だったオーナーから、セーリングにエクスタシーを感じるとまで 言って頂きました。是非、セーリングを感じてみませんか? |