第七十一話 セーリング対クルージング
セーリングをどう考え、クルージングをどう考えるか? 実際の年間の使い方を見て、この二つの割合はどうなのか? となりますが、実際は、年間にクルージングとしてどの程度使うのかと、そのクルージング以外との割合になると思います。 クルージング以外の時は、多分、ピクニックしたり、宴会したり、セーリングしたり、メインテナンスであったり、或いは使わないという事もあります。 一般的な使い方はクルージングです。ですからクルージング艇を選択します。それは常識的な選択だと思います。もし、クルージングに多くの時間を割いているなら、それはOKなのでしょう。でも、もし、年間のクルージングの割合が半分以下だとしたら、多分、そういうのが一般的だと思いますが、ならば、クルージング以外をできるだけ面白くしたい。それはセーリングしましょうという事です。そのセーリングが面白ければ、もっと回数多く乗るようになるかもしれません。 クルージング以外対クルージングの割合を、6:4か7:3程度に考えて良いのではないでしょうか?これが一般的なのではないかと推測します。すると、この6か7の数値に、セーリングを組み込む。 ピクニックや宴会等々は、どんなヨットでも問題無くできますから。 すると、その割合に応じたヨットのコンセプトを選択する方が理にかなっていると思う次第です。という事は、セーリング対クルージングを6:4か7:3で考えるという事になります。 要は、クルージングですがクルージング艇を選ぶ必要は無く、クルージングなんですが、普段はセーリングして遊びます。ですから、セーリング性能をも考慮しましょうという事です。 クルージング艇を選ぶのは、この比率が逆転した時ではないかと思います。 その使い方が6:4か7:3かである時、まあこの数値はいい加減ではありますが、この割合に合うコンセプトを持つヨットを選びます。それが、パフォーマンスクルーザーです。ですから、一般的なクルージング派が選択すべきは、クルージング艇では無く、パフォーマンスクルーザーの方が良いのではないでしょうか? ところが、セーリング重視になりますと、クルーの問題があります。今時、クルーをたくさん抱えるのは難しい。でも、そのパフォーマンスクルージング艇をシングルかダブルハンドで簡単に動かせるなら、それは面白く無いでしょうか? シングルならデイセーラーです。圧倒的にシングル仕様に合ってます。でも、その代わり、クルージング艇としてのコンセプトは弱くなります。キャビンは狭い、ウィークエンド程度の少人数なら良いですが、1週間とかもっととかになりますと窮屈な感じは否定できないでしょう。 それなら、ダブルハンド程度にして、もうちょっとキャビンを広げ、設備もあるパフォーマンスクルーザー。その高い性能を楽に乗る為に、基本セールプランとしては、大きなメインセールを持つもの。それに小さなジブを配します。110%程度かセルフタッキングかです。それならタッキングは楽になります。メインシートのトラベラーは、舵を握ったまま操作ができるように、コクピットに配します。それでも、そこそこ走ってくれるのがハイパフォーマンスヨットだからです。そして、さらに、そのセーリングを支えるのが、高いスタビリティーという事です。 写真は106%のファーリングジ ブです。しかも、ファーリングド ラムはデッキの下に収納され ていますから、通常のファーリ ングジブよりやや大きい。でも、 106%です。 さらに、サイドデッキのジェノアト ラックでは無く、もっと内側に短 いトラックを配し、もっと内側に セールを引き込んでいるのが 解ります。 この時の報告では、風速7-10ノット(TWS)で、6.2-6.3ノットのスピードを得ています。上り角度はアペアレントの風向に対して27~29度です。角度を落として50~60度の時、風はアペアレントで12-13ノット、この時のボートスピードは6.4~6.7ノットと報告されています。 このヨットに大きなジェノアを設置しても良いのでしょうが、敢えて、オーナーの希望でショートハンドを前提に106%としたそうです。それでも、このスピードはかなり良いのではないかと思います。 つまり、高性能ヨットは、こういう事ができます。楽に操船して、良い走りを楽しめる。それを日常の遊びとして楽しみ、クルージングにおいても十分ロングでも遊ぶ事ができる。もし、その気になるなら、大きなジェノアを設置して、クルーを増やして、レースだって楽しむ事ができます。 技術の進化はこういう事はが可能になりました。サンドイッチ構造もそうですし、最新のバキュームバッグ/樹脂インフージョンシステム工法は、重量を増やさずに硬いハルを造る事ができるようになりました。そのお蔭で、バラスト比を高くもできます。さらに、硬いハルは波に負けないし、滑らかさを提供します。後は、設計さえ良ければ、バランスも良く、グッドフィーリングを味わえます。 欧米の最近の大型艇に出てきたのが、通常のフォアステーがあって、そこに大きなファーリングジェノアを配し、そのすぐ内側にもう一本のステイがあり、それにはセルフタッキングとかの小さなジブを配しています。これは従来のカッターリグとは違うものです。 こんなに接近してはジェノアの タッキングは非常に難しい。 でも、最近の考え方では、日常 は内側の小さなジブを使い、ロ ングクルージングの時には、 その前側の大きなジェノアを使 う。ロングでは殆どタッキング は無いからです。 つまり、日常のセーリングと クルージングの時とは分けて 考えています。 小さなヨットには、こんな事はできないかもしれませんが、ハイパフォーマンスで小さなジブにして、日常セーリングを使い易くするというのは、理にかなった考え方ではないでしょうか?通常のクルージング艇に小さなジブとは違います。 ロングクルージング一辺倒で使うなら、また別のアイデアになりますが、沿岸クルージングを楽しむなら、それも年間の使用割合が半分以下なら、日常にセーリングを楽しんでみませんか?というのが提案です。 ハイパフォーマンスヨットを気軽に乗り回す。デイセーラーとパフォーマンスクルーザーがお勧めかと考えます。ハイパフォーマンスをレースと決めつける必要は無いし、ハイパフォーマンスを難しいとか、クルーがたくさん必要とか決めつける必要は無いと思います。ショートハンドで、楽ににその性能を楽しむ事ができます。それができなきゃ意味がありません。 |