第二十三話 スタイル

ひたすら旅を好む方がおられて、ひたすらレースを好む方がおられます。各人各様のスタイルがあり、どれが良いかは自分に聞くしかありません。その中で、デイセーラーのスタイルはと言いますと、あるイメージが浮かんできます。

現代には楽しみがたくさんあります。ヨットにのみどっぷり浸かるのもひとつのスタイルですが、デイセーリングはどちらかと言いますと、いろんな事をする。その中のひとつがセーリングという事になろうかと思います。

ゴルフもします。或いは、テニス、スポーツジムに通うかもしれない。また、絵画や陶芸、ガーデニング、映画もたまには見る。家族と食事したり、旅行に出かけたり、楽器を習う方もおられます。
つまり、どちらかと言うと、セーリングはその趣味のひとつ。だからこそ、気軽でありたいし、シングルが良いし、ちょっとしたセーリングだからこそセーリング性能を求めたい。

何も余暇の全てをそこにつぎ込むわけではありません。一生を通じてやり続けるいろんな事のうちのひとつです。ただ、いろんな事の中でランキングとしては上位だろうと思います。でも、上位だからと言って、毎日やるわけでもありません。だからこそ、尚、さっと出して、快走を楽しみたい。そのハンドリングやスピード感や、滑らかさを感じたい。そういうイメージがわいてきます。

だから、キャビンはそうは必要無いだろうし、でも、デザイン的美意識は高い。見て美しい、乗って軽快、そんな感じです。やはり、キャンピングカーでは無く、セダンでも無く、スポーツカー的イメージです。自由自在に操って、その感覚を楽しみたい。そういうスタイルが浮かんできます。

旅を何週間も、何ヶ月も続けるのは、そこにどっぷり浸からねばなりません。これとは両極にあるスタイルかと思います。長い旅を続けるには、セーリング性能ばかりを求めるわけにも行きません。排水量も多少は重い方が良いし、根本的にヨットに対する考え方が違います。

デイセーリングというスタイルは、ちょっと乗りだから、どうでも良いわけじゃ無く、だからこそ、いい走りがほしい。ヨットにとって本質であるセーリングの、最高の部分だけを、ちょいとつまみ食いするような感じかもしれません。でも、そのわずかな時間に、わずかだからこそ、より快走を思う。
そういうものではないかと思います。だから、デイセーラーというヨットは、セーリングにこだわります。レーサーではありませんが、でも、レーサーとは違うこだわりを持っています。

それは多分、速さという競技では無い、でも、セーリングという行為そのものから、どんな感じが得られるかという、その質を問うものではないかと思います。速さもそのひとつ、操作性もそのひとつ、スタビリティーから来るヒール具合もそのひとつ、滑らかさ、安心感、波に対する当たり具合・・・・いろんな事から、いろんな感じを得ます。それがどうか?と問うのがデイセーラーのスタイルではないかと思います。

つまり、セーリング全てを通して、何を感じるのかを重視したのがデイセーラーだと思います。これまでは、何ノット出ているのか? 勝つのか、負けるのか、どこまで遠くに行ったのか?あそこには行った事があるとか無いとか、そういうものとは違うスタイルなのだと思います。夢はレースに勝つ事、夢は日本一周、それに対するデイセーリングの夢は語りにくい。しかし、自由自在とグッドフィーリングという事ですかね。 

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