第三十一話 速さ

スピードに最も影響を与えるのは、セールエリアと排水量ではないかという気がします。その他の要素としては水線長もあるし、船体の硬さ、デザインももちろんあります。

スピードを言う時、船底のデザインはそれなりのデザインが施されるでしょう。そのうえで、問う時、やはり最も影響を与えるのは排水量とセールエリアではないか?

強風なら、重いヨットでも良く走ります。良く走るというのは、他の艇よりも速いかどうかでは無く、面白いと感じさせてくれるスピードが出ます。でも、軽風になったら、排水量の差がもろに出てくる。

だから軽い方が良い? そうとも言い切れません。それはレースなのか、セーリングなのか、クルーが居るのか居ないのか、そういう事によっても違ってきますし、それにセールフィーリングも違ってくる。

強風で走らせるには、高い安定性が必要ですし、それを軽風で走らせるには、高い安定性を持ったまま、軽い排水量が必要になり、同時に、セールフィーリングを重視するなら、硬い船体も必要になる。これはヨットの永遠のテーマでもあります。

長い水線長というのは、確かに速さに影響を与えます。そのヨットがプレーニング状態にならない限り、水線長の影響を受けます。しかし、どの程度の影響を受けるのか? 排水量ほど顕著に解るのか? 極端に長さが違うヨットでは、それは違うでしょうが。レースの微妙なところは別にしても、一般的には、排水量とセールエリア、それにスタビリティーが物を言うかと思います。

従って、排水量/セールエリアの計算が最も解りやすい速さの要素ではないかと思います。しかしながら、造船所によって、セールエリアをどう表示するかが違います。例えば、標準セールエリアで表示する事もあります。それは大きなローチを持つセールとか、何%のジブかによって違ってきます。そこの確認は必要でしょうね。 I,J,P,Eで計算して、表示セールエリアと違えば、それは標準セールとも言えます。

以前、I,J,P,Eで計算しないと比較できないと書いた事があります。しかし、現実には、どんなセールをセットするかによって違ってくるわけですから、例えば、デイセーラーはみんなセルフタッキングジブです。それなら、そのセールで計算するのが現実的だろうと思います。

かたや、150%ジェノアのヨットと比較にはならないかもしれませんが、そのヨットの性能は兎も角、Aというセルフタッキングジブを持つヨットと、Bという150%ジェノアを持つヨットと、比較するのはおかしいかもしれませんが、でも、現実的に、Aならセルフタッキングにして、Bならジェノアにするなら、それでどっちがどうかと問う事も現実離れでは無いと思います。その2艇のヨットの基本的性能を比較するにしても、Aに150%ジェノアは有リ得ない、Bならジェノアでという事なら、それで比較しても良いのではないか? もちろん、これが全てでは無く、操作性も絡んできます。

Aというヨットはセルフタッキングで、Bより遅いと判断されるかもしれません。でも、Aにもし150%ジェノアを設置すれば、Aの方が速いかもしれない。でも、その特徴的に、Aならセルフタッキング、Bならジェノアという選択なら、標準セールどうしで考えても良いのではないか?実際に乗る仕様で考えて良いのではないかと思います。

150%ジェノアをセットすれば、速さは出てくるでしょう。しかし、同時に、操作性が面倒になる。セールエリアが大きくなれば、それなりのスタビリティーも必要になります。という事は、速さを考え、スタビリティーを考え、シングルかクルー有りか、クルーは何人居るかという事が絡んでくる。

クルー不足の今日、シングルか、ダブルハンドあたりで操作が容易で、そのうえで速さはどうなんだろうと考えるのは、最も現実的ではなかろうか? 今日、レーサーと称するヨットでも、小さなジブ設定になってきています。サイドのチェーンプレートの位置を見ても、大きなジェノア設定は無い。
その代わり、大きなメイン。少人数で走らせるという前提かもしれません。それに、ダウンウィンドでは、おおきなメインとスピンでは絶対有利という点もあります。ジェノアは上り以外では。あまり使いものになりませんし。

これからのセーリングは、小さなジブに大きなメインが良いのでは? 少人数対応ですし、セルフタッキングジブじゃないにしろ、110%以内ぐらいか?それで、排水量に対する比はどうかと見ても良いのではないかと思います。そういう前提のヨットは、JよりEの方が長い。その上でスタビリティーはどうかと見ます。ハルの硬さ?これはデータにはありません。工法から想像するという事になるでしょうか。

次へ        目次