第三十二話　セールエリア

セールエリアを大きく取れば、スピードは出る。昔は常識的にジェノアは１３０％から１５０％程度は取っていました。タックする度に、ジェノアを入れ替える。クルーが居れば、どおって事は無い。でも、そのでかいジェノアは、上りでは良いのですが、角度を落とす度に、威力を落とす。だからと言って、スピンはまだ上げられない。そこで考えられたのがコードゼロ。

一般的にコードゼロは使わない。これはロング用と考えても良い。そこらを考えて、ジェノアを小さくする代わりにメインをでかくしたい。そう考えて、マストの位置を少し前側に移し、ＪよりＥの方が長くなりました。

それでも、バックステーがある限り、メインをでかくするには限度がある。という事でバックステーを無くしてしまう。これで、メインに大きなローチを設ける事ができました。バックステーが無いとマストベンドができない？セールを浅くできない？

そこで、セールは最初から浅目に造って、上りではメインシートを引けば、マストはベンドします。でも、大きくはできない。でも、その分、セールは最初から浅目なので良い。

バックステー無しで、最も気になるのが、ランニング時に波とかで、急激に艇が止まる時。止まりはしないが、急激に波で艇速が落ちる時。大きなパワーがマストのステイにかかってくる。それで、ステイは頑丈にする。チェーンプレートとか、ハル設置とか。

今日の考え方は、いかにショートハンドで速さを得るか？速さはセールエリアと深い関係がありますから、いかにセールエリアを大きくしつつも、操作性では楽にこなせるか？そういうところにあるような気がします。今の時代を反映しています。

ジェノアは巻いて小さくすれば良いという事もありますが、巻きますと、セールのラフに上下のテンションがかからなくなります。その点、メインはリーフしてもテンションがかけられる。それにブームがあるので、どの角度でも開ける。ドラフトコントロールもひねりもコントロールできる。とっても操作性の高いセールです。コントロールしやすいセールの方が大きい方が良いじゃないか、という事になります。理屈です。

ブームが長いとコクピットに邪魔という考え方もありました。でも、それはクルージングというジャンル。そのジャンルでは、メインシートトラベラーもコクピットから排除してきました。その代わりに、大きなジェノアを設置してきましたが、でも、前述のように、ジェノアのコントロールはメイン程にはできない。かと言って、スピンやジェネカーが頻繁に使われるかと言うと、そうでも無い。ダウンウィンドでは、小さなメインとあまり使えない大きなジェノアになってしまう。まあ、それでもクルージングというジャンルでは許せたのかもしれません。それで、ますますセーリング離れ？

セーリングは日常的に遊べるゲームです。セーリング離れはヨット離れを引き起こさないとも限りません。クルージング艇であっても、日常はセーリングを楽しみたい。

メインをでかくしたとしても、やはりランニングではジェネカーが課題になります。シングルでは、ちょっと難しい。ファーリングにしても、ジャイブは難しい。ジブブームはそんな課題を解決しています。シングルでも簡単に走れる。とは言っても、やはりジェネカーのセールエリアには敵いません。

それでシングル時は、ジブブームを使い、ひとりクルーが居る時にはジェネカーを使う。そういう方法が最近では増えてきました。アレリオンやハーバーはそういう事ができます。

アルコナヨットはシングルができるヨットとは言いません。ダブルハンド。基本セールプランは、大きなメインと小さなジブ。それでいかに走るかを考えて設計、建造されています。ダウンウィンドはもちろんジェネカーを使う。クルーが居る前提なので、これもＯＫ．

良く、シングルが可能とか言いますが、オートパイロットを使えば、大抵のヨットはシングルが可能です。でも、実際、上りから下りまでシングルで楽しむ事を考えますと、不可能では無いが、大きなジェノアはどうか？　ましてジェネカーはどうか？　ファーリングなら、ジャイブ前に巻き取るという手法はありますが。それに、上りにしても、シングルで、強風時に、風下側のジブシートウィンチを操作するのは楽じゃない。それではシングル可能は可能でも、シングル仕様とは言い難い。

本当の意味でシングルを誰にでも可能にしたのはデイセーラーだと思います。それもジブブームのお蔭かと思います。これなら、風上からでも、風下からでも操作が可能ですし、ダウンウィンドもそのまま走れます。そしてさらに発展していくのが、いかにセールエリアを増やしていくか？アレリオン２８だって結構良く走ってくれます。でも、そこで留まらないのが人の常。

この間、造船所にアレリオン２８のＳタイプを出す気は無いか？と尋ねましたところ、アイデアとしてあるものの、まだ具体性は無いようです。アレリオン２８はデイセーラーの象徴的ヨットです。これが無くなる事は無いでしょうが、いつかＳタイプが出る可能性も有り？　３０のＳタイプなんかでも良いな～とも思います。

基本的に、クルージングであっても、日常はセーリングして、セーリングを楽しむなら、速い方が面白いと考えます。

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