第九十二話 潮止まり

クルージングを計画する時、その過程に狭い海峡を通過する事があります。海の干満の影響で潮は流れ、海水が移動するに当たって、この狭い海峡では、潮流がものすごく速くなります。潮によっては、8ノットや9ノットという事もあります。これでは、ヨットは敵いません。潮流に逆らっては、押し戻される事になるし、潮流に乗るにしても、速い潮流では舵が効かなくなる事があります。それで、皆さん、潮どまりを狙って通過されます。

この潮流を知る為に潮汐表というのがありますので、これを見るわけですが、そこには干潮と満潮の時刻と潮位が書かれています。さて、潮どまりとはいつなんでしょうか?これには潮どまりが書かれていません。

満潮は潮位が最も高い時刻で、干潮は潮位が最も低い時刻。満潮から干潮へ、そしてまた満潮へと潮位は緩やかなカーブを描いて増減していきます。そのカーブも一定ではありません。

潮どまりは、潮が流れて、反転する前の潮の止まりという事になります。それで、ちょっとした勘違いが起こります。潮が流れて、干潮から満潮方向に転ずる時、またはその逆の時に止まる?
従って、満潮時刻、または干潮時刻が潮止まり?考えてみれば、干潮になったら、それから満ちる方向に動くわけですから、干潮時刻が潮どまりと考えやすいと思います。満潮時でも同じです。理屈で考えても、そうなるように思えます。干潮から、満潮方向に反転して、満潮時刻に止まって、今度は干潮に向かう?

ところが、実際は、こうなりません。満潮や干潮時刻を狙って海峡に入ったら、ゴーゴーと潮が流れていて、とっても入れなかった。そうなります。何故かと考えますと、海水の流れは、潮止まりから、ゆっくり流れ始め、スピードを増し、干潮または満潮時にも結構強く流れます。大量の海水が押し寄せ、陸地が無ければ良いのでしょうが、狭い海峡ですから、大量の海水が押し寄せて、流れるスピードが速くなります。海水はどんどん流れたいのですが、狭いもんですから、順番に流れるの待っている状態で、いきおいが強くなります。

干潮や満潮時刻を過ぎても、そのいきおいを止める事はできません。そのいきおいが止まるまでは、同じ方向に流れる事になります。ですから、干潮や満潮では潮どまりにはなりません。丁度、坂道にボールを転がしたら、一番下でピタリとは止まりません。少し、いきおいが無くなるまで今度は坂道を上ります。干潮時刻から次の瞬間に満潮の最強になるわけでは無く、ゆっくり最強に向かっていくわけですから、反転する力もまだまだ弱い時間です。ですから、いきおい良く流れる海水は、しばらくはそのまま流れ続ける事になります。

でも、徐々にそのパワーを失って、やがては止まる。これが潮どまりです。満潮と干潮の間に潮止まりがある。詳細は、その地域の潮汐表を見てください。潮汐のカーブによっても異なります。
潮どまりは釣りをする人はそれによって釣果が異なるそうで、気にされます。でも、外海なら、満潮、干潮時刻が潮どまりになるでしょうね。でも、海峡は強い流れがありますから、それが止まるのは時間がかかる。でも、ぴったり止まった時だけが航行可能では無く、1,2ノットあっても問題無いでしょうし、でも、その流れが逆潮方向で、どんどん潮流が強くなる方向ですと、時間がかかると、潮流がどんどん強くなりますから、要注意。1ノット、2ノットの逆潮で入って、それから止まって、その後は潮に乗る方向なら問題は無いですね。だいたいですが、干潮と満潮の真ん中あたりが潮どまり前後と考えて良いのではないでしょうか。もちろん、その時、地域にも寄りますが。でも、だいたいはそんなところかな? 

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