第九十三話 GPS

GPSは位置情報を知るだけで無く、ヨットのスピードも出ます。でも、GPSというのはその場所から移動していく対地の情報で、スピードを出しますから、船体にスピード計が設置してある場合、スピードは異なります。

船体のスピード計は対水になります。ヨットが移動していなくても、海水が流れていれば、スピード計があがります。潮の流れが2ノットあれば、アンカー打って停止していても、スピード計は2ノットを指します。でも、実際は移動していないので、GPSは0ノットになります。

ヨットが5ノットで走っている時、スピード計は5ノット。この時、海水が正面から2ノットで流れているなら、実際の対地スピード(移動スピード)は3ノットです。海水の流れ分、スピード計のセンサー(小さなプロペラ)はその影響を受けて、より多く回転しています。

逆に、後ろから2ノットで流れている場合、実際の移動でのGPSスピードは7ノットという事になります。2ノット分は、海水の流れがスピード計のプロペラの回転を相殺していますから。つまり、ヨットのエンジンを動かさず、セールも出さず、風の影響も無い時、ただ漂っている時、そこに後ろから2ノットの海水の流れがあるなら、スピード計は0ノット、GPSは2ノットを示す事になります。

これがスピード計とGPSのスピードとの違いになります。

また、横から海水の流れが来ている時、ヨットは真っ直ぐ走っているつもりでも、横にも流されます。例えば、真北に船首が向いて走っても、横流れで、実際は少し西とか東側にずれています。これをGPSで見ますと、GPSは船首がどっちを向いていようがお構いなし。どっちに向かって移動しているかになりますから、GPSを見れば、真北に向かっていない事が一目瞭然です。従って、GPSで真北に向かうように、舵を調整して、西側か東側に少し切る。それでGPS上で真北に向かえ
ば、目指す地点に到達します。

クルージングで、海図から出した進行方向にコンパスを合わせて走ると、横にずれて、目的地から外れていく事があります。オーパイ任せで気にしないと、とんでもなくずれる事がありますから、要注意。GPSがあれば、簡単に確認して修正できますから、GPSの何と便利な事。

GPSは昔は非常に高価でしたが、今では10万ぐらいで、性能も良い。ハンドヘルドなんかでも良い。画面は小さいですが。中古艇についたGPS、もう古いのであれば、新しいのに交換した方が良いかもしれません。それに、昔のは各地方の海図を何枚も買う必要があって、カードの入れ替え式でしたが、今のは、カード無し、日本全国が既にインストールされています。

こういう電子機器は進化のスピードが非常に速い。それゃあそうです。ICがどんどん性能アップしていき、後は頭の中のアイデアとプログラム次第で、どんどん進化する事ができます。それに比べたら、機械物は、アイデアはあっても、実現には困難があります。それに、全てのヨットに同じように設置できるかどうかも難しい場合があります。電子機器に比べると進化が遅いのは頷けます。
でも、電子で全てが解決できるわけも無く、電子はあくまで補助的です。

GPS機能には、任意の地点を登録する事もでき、例えば、どこかにクルージングに行く時、あらかじめ登録した地点に向かっていけば、それにオートパイロットを合わせるなら簡単になります。
いろんな機器のおかげで、昔に比べたら簡単にクルージングに出れるようになりました。ですから、どんどん出かけて頂きたいと思います。でも、機械は機械。故障しないとも限りませんから、海図は常に見て、見慣れて、準備はしておいた方が良いとは思います。ロングに行かれる方など、艇設置のGPSの他、ハンドヘルドGPSをお持ちの方もおられます。ハンドヘルGPSで、海図が出ないタイプ、データのみの場合はやっぱり海図が無いといけませんので、海図は必須かと思います。
でも、最近、海図を見なくなりましたね。ついつい、GPSばかり。でも、いざという時はやっぱり海図です。解っちゃいるけど、やっぱりGPS画面を見てしまいますが。

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