第九十九話 ロープ

ヨットに使われるロープ素材はいろいろですが、ロープはできるだけ伸びない方が良い。セールを上げて、セールに風をはらんで走りますと、そのセールにかかるパワーは非常に大きいですから、当然ながら、そのセールを支えるロープに負担がきます。セールも伸びるし、ロープも伸びる。そうなると、セール形状は変わり、その変化も良い方向には変わらない。より、ドラフトを大きくして、ヒールが大きくなったりします。ですから、さらにテンションを加えてとなります。

全く伸びないロープはありませんが、高価なロープは伸びが少ない。それで、レーサーはできるだけそういうロープを使います。そこまでは無いにしても、通常のヨット用のロープは一般ロープに比べて、強く、伸びは少ないように作ってあります。伸びないロープは、それ以上の力が加わると、プツンと切れる。ですから、強いロープが必要で、でも、ヨットは固定されません。動きますから、その動きでやわらげるという事もあります。

さて、時々、そういうロープを係留にも使われる場合があります。しかし、係留ロープの場合は事情がちょっと違う。風が吹いて、ヨットを流す。その時に、係留ロープがそれを止める。この時の力は、セールに風がはらむ時にかかる力とは比べ物のならないくらい小さくなります。それで、そういうヨット用ロープは伸びないようににできてます。という事は、船体が風を受けて、それをロープが止める時、結構なショックがクリートにかかります。突然、ポンとショックが来ます。

それで、こういう場合は、伸びるロープの方が、ショックをやわらげる。少しでも伸びて、ショックをやわらげる方がいいかと思います。係留用ロープですね。ただ、ロープが伸びますと、強風時、
強い力がかかり、思った以上に伸びるという事もありますから、ヨットの前のスペースにはちょっと広めの余裕を持っておく必要はあるかと思います。それがあまりないと、強風で一晩さらされて、バウが桟橋にゴツンとあたるという事もありますね。ですからスペースを。

それから、アンカーに使うようなロープの場合でも、伸びた方が、ショックをやわらげます。破断強度のあるロープなら良いという事では無く、伸びて、ショックをやわらげるという事も重要かと思います。伸びないと切れやすい。アンカーでヨットを固定していますから。ちなみに、オールチェーンの場合、もし、すごい強風に見舞われ、チェーンがストレートに伸びるような事があったら、それは1本の鉄のような物、ショックはもろにヨットにかかります。通常はそこまではありません。チェーンの重みで垂れていますから。垂れるいる間は、チェーンは有効ですね。

その伸びるロープも、古くなって、固くなって、そういう特性を失ってきます。ですから、本当は変えた方が良いのかもしれませんが、実際は切れかかってこないと変える気にもなりませんが。

セーリングに使うロープも、古くなって、固くなります。そうなりますと、非常に使いづらい。徐々にそうなりますので、本人は気にしない事もあるかもしれませんが、これを新しくしますと、見た目にきれいですし、使いやすくもなります。でも、一度に全てのロープを変えるとなります、かなりコストがかかります。30フィートぐらいでも、全部変えると、200mぐらいすぐ必要になります。そうできれば良いですが、まあ、1本づつでも、最も操作頻度が多い順でも良いかもしれませんね。

シート類の交換は簡単ですが、ハリヤード類はマストの中を通りますから、ちょっと手間がかかります。既存のロープエンドに、新しいロープをつないで、古いロープを引いて、入れ替える。ヨットによっては、ロープエンドに糸で輪を作ってあるのがありますが、これは交換用で、これにつなぐと入れ替えしやすい。それが無い場合では、細いロープで、両方をしばり、マスキングテープなどで、巻いて1本につなぎます。但し、入れ替える時、何かに引っかかったりします。そういう時に無理に引きますと、つなぎが外れてしまう事もありますから、要注意です。まあ、万一はずれても、なんとかはなります。但し、マストに登るはめにはなりますが。

余談ですが、先日、ジブハリヤードが切れて、セールが落ちてきたヨットがありました。切れた箇所はマストのシーブの部分。マストからの出口の箇所です。ジブセールはファーリングですから、年がら年中上げっぱなしです。という事はハリヤードの同じ箇所が常にシーブに接触していますから、それで切れてしまった。セールを下ろしませんから、その箇所がどうなっているかもわからない。
そういう事もありますから、たまには、セールを下ろして、ハリヤードを点検するという事も必要ですね。メインハリヤードは、その点、いちいちおろしますから、毎回見るわけですから、すぐに気がつきますが、ジブハリヤードはそうはいきませんから。

次へ        目次