第六十六話 環境の問題
環境問題では無く、環境の問題です。マリーナを見渡しても、そこがリゾート的で、そこに居るだけで楽しさを満喫できるというマリーナはそう多くは無いように思えます。かと言って、ヨットを出して、どこかに寄るような良い場所があるかと言えば、それも多くは無い。 そういう環境の基でヨットを考える場合、どうしたら良いのか? 昔、あるアメリカの造船所の社長の自宅に招かれた時、船を出して、ちょっと走ったところに桟橋付きのレストランがあり、そこで食事をした覚えがあります。また、イタリアで試走した時、漁港みたいな処に入った事がありますが、いずれにしろ、おしゃれで、寛げて、そこでゆったりして帰っても、1日を遊ぶ事ができる。 そんな場所が、周りにいくつもあるなら、1日を遊ぶのに苦労はしません。おまけに、マリーナに帰っても、そこでも楽しむ事ができる。そんな環境だからこそ、どこにも寄らないで、入江にアンカーを打って静かに過ごす人達でも出てくる。マリーナもたくさんあって、こじんまりした静かなマリーナもあれば、それこそでかくてリゾート的なマリーナもあって、好きな場所を選ぶ事ができる。重要な事は、選択できるという事です。施設があるからこそ、それを避けて静かな場所を選ぶ事ができますが、無ければ選べない。選んでそこに入るのと、選べないで入るのとでは違います。 ヨットをレジャーとして遊び、満喫するには、こういう環境が必要かもしれません。これらが無くても、できない事は無いが、でも、やっぱり違うんですね。 日本にはこういう施設が少ない。そういう環境の中でどうして過ごしたら良いのか?こういう環境が整っているなら、マリーナが閑散としている事は無くなるかもしれません。例え、寒くて、強風で、雨でと言っても、マリーナには人が集まって、そこで過ごせます。 日本にレジャーとしてのヨットが定着しにくいひとつの理由は、これかもしれません。欧米でも、動かないヨットは多いと聞きます。でも、それでも、人々は楽しむ事ができる。そういう環境にある。 ところが、日本の場合は、港は商業として発展してきました。レジャー的な部分は少ないのが現状で、そういう環境を求めてもしょうがない。だから、自分で創るしかありません。と言いましても、自分で何かの施設は作れませんから、どう対応したら良いのか? そういう環境でヨットやるかやらないか?もし、やるならどうしようか?時に仲間を集めて、家族を集めて、施設に頼らず楽しむ事は可能です。でも、レギュラーとしてどうするか? そこで考えたのがセーリングをもっとしましょうです。ヨットを別荘的に使うのは、出せない時です。 出したくない時です。出す時はセーリング自体を楽しみましょうという事です。ですから、出したら、すぐにビールやお弁当を開くのでは無く、セーリングをしましょうという事です。これはスポーツです。2〜3時間セーリングして、帰ってからお弁当です。2〜3時間のクルージングをしても、どこにも行けませんし。でも、2〜3時間のセーリングなら、結構面白い。短時間ですから、集中してやる事もできるからです。集中すれば、いろんな事に気づきます。気づけば、進化にも繋がります。 これがデイセーリングを推奨する理由です。デイセーラーというヨットで無くても、どんなヨットでも、1日という短い単位を過ごせる手段を持つ事は重要です。そこに面白さがあるなら、もっと気軽に、もっと頻繁にヨットに行ける。行きたくなります。何しろ、長期休みというのは、なかなかありません。そして、デイセーリングを日頃の常としているからこそ、そこに馴染む感覚が創られ、望む方はクルージングへも行き易くなる。 或いは、セーリングをもっと掘り起こして、セーリングをもっとという人達も出てくるかと思います。レースに興味が出てくる人も増えるかもしれません。いずれにしろ、1日を面白くできるかどうか、何度やっても面白さを感じるかどうか、その最も近い処にあるのが、デイセーリングではないかと思っています。 デイセーリングは短い時間ですが、でも、その1回単位で、セーリングをどうこう言うのをやめて、長い単位で見ます。1ヶ月単位とか、できれば1シーズン単位とか。何故なら、1回のセーリングでは良い事もあれば、悪い事もある。そのたまたまのセーリングだけで評価するのは正しくありません。それで、1シーズンを通して、セーリングがどう変わっていくのかと見れば、確実に上達しています。それは技術だけでは無く、知識も増えているし、何しろ、感覚自体が上がっている。感じる力が増えています。そして、いろんな応用力も備わる。それを何年も続けるなら、相当なもんです。 日本では、こうやって、どんなヨットであろうが、でかかろうが、小さかろうが、遠くに行くだけがヨットではありません。1日を、いかに気軽に、有意義に過ごせるか?環境の問題はどうにもなりませんから、自分達で面白さを創るしかりませんから、それにはデイセーリングが一番だと思っています。 ですから、すべてのヨットオーナーにお薦めしたいのです。 |