第七十七話 ハイスピードボート
でかいキャビンボートにゆったり乗るのも良いのでしょうが、その反対で、ハイスピードボートを楽に乗りこなせるというのも、おおいに有りではないかと思います。もし、そのハイスピードボートを操るのに、何人ものクルーが必要なら、あまり考えたくは無いのですが、シングルでも、楽にこなせるとしたら、それは面白いのではないでしょうか。 デイセーラーがそこそこシェアーを獲得するようになって、その進化の先は、もっとスポーツ性を高める方向に進んでいます。その多くはワンデザインレースを視野にいれて進化させていますが、ハイスピード、イコール レース と考えていくのも、造船所の意図は解ります。しかし、レースは兎も角、ハイスピードヨットをシングルで、しかも楽に操作できるヨットというのも、今後は有りではないでしょうか? レースをしない方はクルージングと相場が決まっていました。でも、セーリングそのものを面白くと考える私としては、一般の方々が、気楽にハイパフォーマンスセーリングを楽しめる事を願っています。レースは出ようが、出まいが、それは各個人の勝手で、日常セーリングの中に、気楽さと面白さを感じて頂きたいと思っています。 アレリオン33スポーツは、そういうヨットのひとつです。多分、電動ウィンチ等を使わないで、楽にシングル操作をできる最大ぐらいのサイズかな?とも思います。これ以上大きくなりますと、セールはもっと大きくなり、電動ウィンチに頼りたくなる部分もあるかもしれません。また、総合的に考えますと、クルーが欲しくなるかもしれません。 元々、デイセーラーはそういうスポーツヨットです。でも、最新のデイセーラーの進化は、さらに速くとスポーツ性を高めてきています。カーボンマストは当たり前で、船体にまでカーボンを使うヨットもありますし。メインセールもアメリカズカップのようにトップが四角いスクウェアーメインというのもあります。 シングルを容易にした、ハイパフォーマンスヨット、それはスポーツ的に遊ぶ事を意味し、スポーツカーの類ですから、走る事に面白さを感じられる、まさしくセーリングを面白くできる最大公約ではないかと思います。 そんなヨットを手軽にに出して、サ〜っと走ってこれる。そんな日常に、有意義な充実感を感じます。充実と言っても、重い感じでは無く、気楽で、日常的であるところに意味があります。その手軽さの中に、ハイパフォーマンスという高いフィーリングが味わえる所にその価値がある。 車の事はあまり詳しく知りませんが、スポーツカーを楽しむ人達にとって、ハイスピードというのもあるのでしょうが、まあ、制限速度はあります。しかし、スポーツカーの持つ加速感、レスポンスの良さ、ボディ剛性から来るフィーリング、高速での安定感等々、見た目のスタイリングの良さだけでは無く、そういうフィーリングこそが面白さとして受け入れられているのではないかと思います。 これらのスポーツカーは、荷物を運ぶ事や人を運ぶ事を使命としているわけでは無く、主な目的はスポーツ性にあります。それが面白いからです。 ヨットも同じで、操作して、その反応を楽しむ事にスポーツ性があります。加速感を楽しみ、船体剛性を楽しみ、スピードを楽しむ。そういうジャンルがもっともっと増えてしかるべきと考えています。 スポーツカーはひとりで運転します。彼女を隣に載せたとしても、運転はひとり。では、ヨットもそうしましょう。ひとりで操船できるシングルハンド。 ヨットは車と違って、毎日乗る事はありませんが、でも、時々マリーナに来ては、そういうハイパフォーマンスセーリングを堪能してくる。スポーツカーだって、だいたい毎日乗る事も無いようです。普段は違う車を通勤に使うとか。ヨットは通勤や荷物運びに使えるものではありませんから、セカンドカーをスポーツカーにするという考え方をしなくても、ヨットという存在の在り方を考えれば、ファーストカーにスポーツヨットという事も十分考えられるのではないでしょうか? 高い安定性、操作性の良さ、高い船体剛性、滑らかなセーリング、反応の良さ、スピード、スタイルの美しさ、キャビンの広さを多少犠牲にしてでも、これらの恩恵は余りあるものではないかと思います。そして、何と言っても、そのヨットを気軽に出せるという事です。それが日常とするには必要ですね。 スポーツカーを操るのは若い人達より、熟年の方が似合う。スポーツヨットも同様です。熟年が走るからこそかっこいいのではないでしょうか?若者にはまだまだ。 |