第八十八話 デイセーラーの発展

デイセーラーが浸透するに従って、常にあるのは、次のステップをどうするかです。最初は、シングルによるセーリングの気軽さ、面白さ、高い帆走性能を気軽にセーリングする。それを伝える事だったかと思います。しかし、それが世界に浸透してきたら、次のステップをどうするか、いつまでも、留まるわけにはいきません。

その発展のひとつは、スピードです。スポーツ性をもっと高めて行く事になります。もちろん、それでも、シングルを可能にしている。また、スポーツ性を高める事によってワンデザインのレースも同時進行していきます。残念ながら、日本ではまだまだその域には達していませんが。

もうひとつの発展の方向は、クルージングの可能性をもう少し伸ばす事です。しかし、あくまでベースはセーリングに重点を置いていますから、多少のキャビンスペースを設けるにしても、セーリングを損なわない程度、よって、ショートクルージングという事にはなると思います。それがもっとというなら、サイズをでかくして、それによってキャビンスペースを確保する。

スポーツ性への発展はアレリオンスポーツ33に見られます。そして、クルージングという意味で、少しそういう要素を加えてきたのが、今年デビューしましたハーバー30プラスです。プラスとは、そういうクルージング要素です。また、アレリオンにも41フィートサイズのプロジェクトが進行しています。

我々の多くは、近場でのクルージングとデイセーリングで、殆どをカバーできるのではないでしょうか?セーリングを楽しむ、レースを楽しむ、近場のクルージングを楽しむ。

性能を見れば、従来のデイセーラーでも十分に、我々が楽しむセーリング性能を持っていますが、さらに進むのが世の常ですから、今後は、さらなるスポーツ性と気軽な、近場へのクルージングという方向へと発展していきます。

加えて、ジェネカー装備を当たり前にしていくことも忘れないでほしいと思います。それを可能にするように、造船所でのバウポールの設置というデザインをしてもらいたいと思っています。ファーリングジェネカーの可能性を得ておきたいからです。

日本では、まだまだデイセーラーが浸透してきたとは言い難い。やっと少しだけ存在が知られてきたかなという程度です。世界では、既に、いろんなもっとスポーツ性能を高めたデイセーラー、レーサー的なデイセーラーが出現しています。これらの発展は、デイセーラーがかつて出現し、それが広く受け入れられてきた事によって発展してきたものだと思います。

1990年代初めに、アレリオンが出てきて、それがアメリカで受け入れられ、売れ始めるのに
約10年を近くを要し、その後の10年は発展期、この発展期に、他の造船所からもいろんなデイセーラーが生まれ、さらに発展しようとしています。しかし、いかに発展しようが、デイセーラーという基本コンセプトは失われないようにしてもらいたいものです。これからのデイセーラーは成熟期になると思います。多分、これからの10年間において、真のデイセーラーの有り様が創られるのではないかと思います。

デイセーラーをどうやって使いこなしていくのが、最も我々にとって有効であるのか、レーサーもあれば、クルージングにも使えるデイセーラーがある。どれが最も主になるのか? 或いは、全く違う使い方が出てくるのか?楽しみですね。

しかし、どうなるにせよ、基本はセーリングを楽しむ処にあると思います。レースをしようが、クルージングしようが、基本的にはセーリングを遊ぶ。そこを楽しむ限りでは、シングルを容易にし、高い帆走性能で、気軽に出せる。レーサーの如き性能を持つデイセーラーをシングルで気軽に遊ぶという事もあるかもしれません。より良きセールフィーリングを味わう。そこに変わりは無いと思います。日本はさらに遅れる事、10年ぐらいでしょうか? もっともっと、誰もが気軽にセーリングを味わえるようになると良いな〜と思います。

デイセーリングを遊ぶに、必ずしもデイセーラーでなければならないわけでは、もちろんありません。通常のクルージング艇でも、レーサーでもできます。要は、そういう気運が高まってくればと思います。気運が高まれば、セーリング人口が増えていきます。それで良いかと思います。

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