第三十一話 ヨットの見方

完璧なヨットが無い事は誰もが承知している事です。それで、新しいヨットを見る時、どういう目で見るか?それによって、随分判断は異なると思います。

客観的な見方ができるのであれば、理想的だとは思いますが、なかなか難しいかもしれません。もちろん、数値的なデータが客観的な事実を表わしますので、そこから入るという方法があります。
そのデータとして最も参考になるのが、排水量/セール面積比ではないかと思います。

この数値は、セーリング性能の一部を表します。セーリング重視のヨットでは、SADR値が高くなります。レーサーなんかは非常に高くなります。逆に、クルージング艇では低くなります。SADR値が高いから、低いから、良いとか悪いとの判断では無く、そのヨットの性格がどうなのかの判断材料にする為です。

もし、レーサーみたいな格好していて、SADR値が低いなんて事は有り得ないですが、もしあるとしたら、こんなのが速いわけがありません。逆にクルージング艇なのに、SADR値が高いとしたら、その分クルージング的要素が削られていると見て良いと思います。でも、それが悪いという意味では無く、純クルージング艇では無いという判断をする事ができます。

このSADR値を基に、いろんな艤装とかを見ていけば、全体のバランスがそこに調和しているかどうかと見る事もできるかもしれません。

例えば、SADR値が高く、25ぐらいあるとしたら、これは結構高い数値です。でも、メインシートの位置がブームエンド近くから引いてあれば調和していると思いますが、ブーム中央から引いてあるなら、これはシートを引く力が相当必要だと思われますし、強風時なんかですと、ブームを破損してしまうかもしれません。まあ、実際そういうデザインは無いとは思いますが。

そこでもっと簡単な方法は、メインシートがブームのどの位置から引かれているか? それを見れば、セーリングを重視しているか、クルージングを重視しているかが解りますから、その上で他の艤装がそれに調和しているかどうかと見て行っても良いかなと思います。

セーリングはヨットの基本ですから、そのセーリングをデザイナーはどう見てデザインしているかを考えれば、そのヨットのコンセプトが見えてくるのではないかと思います。クルージング艇だろうが、レーサーだろうが、判断の最初の入口はメインシートの位置ではなかろうかと思います。

プロがデザインする限り、極端にアンバランスなセールプランは無いだろうと思います。そのシートの位置とSADR値で、かなりの事が判断できるのではないかと思います。もちろん、他のヨットと比べていかないと、その程度が解らないと思いますので、是非、いろんなヨットを比べて頂きたいと思います。

そして、どんなヨットであろうと、そのヨットの良い処を意識的にでも探すつもりで見た方が良いのではないかと思います。それが特徴であり、どういう使い方に合うかが解ります。自省も込めて、そのように努めたいと思います。

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