第五十六話 便利な世の中

世界中が便利な世の中になっています。交通手段もそうですし、インターネット、携帯電話、それで、ますます我々は忙しくなるばかり。便利になればなるほど、のんびりなんかできません。忙しくなるのが我々の進化というものであります。

それで、昔はのんびりしていたのかと言いますと、そうでも無く、やっぱり昔も忙しかった。でも、今は、昔の2倍も3倍も仕事をこなす。だから忙しいのであります。文明人は忙しいのが好きなのでありますね。忙しい事で安心したりもする。変な生き物なのであります。

ですから、これからはやっぱりデイセーラーが活躍します。忙しい方々には、デイセーラー。短時間を有効に使え、リフレッシュさせてくれます。

そこで、やっぱり便利さばかりを追い求めますと、またまた、社会のストレスを持ち込みかねませんので、便利さも結構ですが、ほどほどに。自分の手の感触で、操作をするという感覚的な部分があるからこそ、面白さもわいてきますから。バランスであります。

昔は、ファーラーなんかありませんから、セールチェンジして、セーリングが終わったら、セールを全部たたんで、ビルジみて、デッキを洗って、そんなセーリングでした。それでも、稼働率は今より高かった。それが、今では便利で、ファーリングですし、メインはブームの上にたたんで、カバーをかければ終わりです。デッキを水で流すのも、多くのマリーナには桟橋に水が供給されている。
実に便利に楽になったものです。ですから、もっと気軽にヨットに乗れるはずなのですが?

それでも、稼働率が低くなったのは、クルー不足のせいでしょうか? 若者がヨットに来ないようになったせいでしょうか?50代が若手なんですから、どういう世界でしょう? そのうちマリーナは老人の施設になってしまう?これではいけませんね。

だからと言って、若者を縄でしばって引張てくるわけにもいきません。それで思うに、最も良い方法は、現在の現役のヨット乗りが、もっともっと心から楽しむ事ではないかと思います。現役の方々がもっと楽しんで、稼働率が上がっていけば、何がそんなに面白いのか、と興味を示すようになるのではなかろうか? だから、他人はほっといて、今、自分が、最高に楽しむ事を考えた方が良いと思います。

考えてみれば、稼働率の低いマリーナに来て、楽しいはずがない。賑やかだったら、何か惹かれます。人が集まれば、何かが起こる。それでもっと賑やかになる。世代交代の最大の秘訣は、若者をどうこうしようでは無く、今のオーナーがもっと楽しむ事ではなかろうか?

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