第九十九話 設定セールとSADR値

本当は全てのヨットを比較するには、IJPEによるセールエリアでもって、SADR値を算出して比べるべきかもしれませんが、このデータが出ていないヨットも多い。それで、標準セールで計算しても良いと思います。もちろん、これでは他のヨットとの性能比較が正しくないという事にはなりますが、でも、そこの処は頭に入れておいて考えます。

前話で、SADR値25前後以下で十分という話をしましたが、このSADR値25も、ヨットによっては、セルフタッキングもあれば、150%ジェノアという事もあります。でも、もし、同じSADR値であるなら、どっちがコントロールし易いのかと考える事もできます。

また、排水量がひとつは重く、ひとつは軽いとしたら、それで、SADR値が同じぐらいとしたら、重いヨットの方が、セールがでかい事になります。マストが高いかもしれない。それじゃあ、コントロールはどうか、スタビリティーはどうなんだという事になります。

SADR値は排水量とセールエリアの関係を表しますから、そこから推測していって、いろんな事が考えられます。それで、水線長、バラスト比、幅、吃水等々が参考になっていきます。さらに言うなら、これはデータとしては出ていませんが、船底形状、キールやラダーの形状、さらに、船体の硬さという事になります。ここまで見ていきますと、かなりの事が解るかと思います。

ヨットを見るという事は、そのヨットをデザインしたデザイナーの意図を推測する事ですし、そのヨットを建造した造船所の意図を推測する事になります。どういうヨットを造ろうと考えたのか?そのヨットのここが良いとか、あそこが悪いとかの評価では無く、どういう意図を持ってデザインし、建造したのか?そこには、性能もあれば、見た目もあれば、コストもあります。

美しい、気に入ったヨットを選べば良いと思います。惚れる事が最も大事で、どんなに性能が良かろうが、気に入らない場合はどうしようもありませんから、データだけが選ぶポイントでは無く、気に入って、その候補がいくつかあると、そこから性能を調べても良いのではないかと思います。

でも、気持ちが、クルージング艇のような姿を気にって、それで、速く走らせたいという矛盾する要求は起こらないのではないかな〜とは思うのですが。

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