第十六話 偏向

全く偏向の無い中立な意見を持つという事は極めて難しいだろうと思います。中立とされるマスコミ報道にしても、真に中立とは言えません。まして、私個人如きが中立になんてなれません。それで偏向していますと宣言したうえで、いろんな事を言った方がベターではないかと思います。

ご存知の通り、これまで書いてきました内容から察しても、偏向がおおいにあります。セーリングという方向に傾いています。ですから、クルージング派の方々から見られたら、納得できない事もたくさんあると思います。ただ、世の中、過去20年以上、クルージングの事かレースの事ばかりでした。これも偏向しています。その偏向に、別な偏向で対応して、バランスを取ると考えます。

ただ、バランスを取る為に故意に偏向しようと考えたわけでは無く、これまでのやり方では、ヨットが盛り上がらないと考えたからです。レースの状況、クルージングの状況、マリーナでの過ごし方等々を見ても、あまり盛んとは言えません。もちろん、世の中の経済状態が強く影響している事は間違いございませんが、少なくとも、現存するヨットが係留されっぱなしという状況は、何とか打開していく必要があると思います。それで、新規参入を促すというより、現役ヨットの稼働率を上げる、つまり、現役オーナーがより楽しめるようにするというのが必要ではなかろうかと思う次第です。

現役が活発に活動し、楽しさ、面白さがあそこにあるなら、新規参入は自ずと増えてくるのではなかろうか?そう考えて、セーリングという事に偏向する事としました。その結果が、デイセーラーであり、ハイパフォーマンスクルーザーです。

それで、これまで、ファミリークルージングは無いとか、でっかいキャビンは寝泊りする為にあるとか、最初はみんなが集まってきても、その後は来ないとか、セーリングの爽やかさは最初の30分だけとか、いろいろ書いてきました。これらは、立場が違うと意見が違います。ですから、偏向であります。

ただ、偏向だろうが、何だろうが、自分にフィットするかどうかですから、あるひとつの偏向的見方は、そういう意見もあるという事に気づかされるという事ですから、ここで言いたい事は、全ての意見は偏向しているという事です。立場によって変わります。ですから、最終的には、自分のフィット感を大事にしていただきたいと思います。つまりは、自分と同じ立場、或は近い立場から出た意見かどうかではないでしょうか?

かつて、私の意見が偏向しているという事を言われた事があります。その通りであります。偏向しています。私自身、その事について考えた事はありませんでしたが、ちゃんと考えますと、偏向している事に気付きました。ですから、偏向してますと宣言致します。

クルージングという偏向があり、レースという偏向があり、キャビンやセーリングや、いろんな偏向だらけであります。それぞれに意見があり、理屈があり、間違いはどこにもありません。みんな正しいけど、偏向している。だから難しい。その判断は、現実はどうなのか、もちろん、自分の現実であります。他人の現実はどうでも良い、自分の現実として合うか合わないかが重要なんだろうと思います。

現実を考えますと、例えば、忙しくて休暇なんか取れない方にとって、いつか、外洋のロングクルージングという夢を持っているからと言って、今、そういうヨットを買うのが良いのか?それは夢かもしれません。しかし、そのヨットは現存する現実として動かさなければなりません。それが今は難しくなるかもしれません。夢は先に、現実は今楽しむべきだろうと思います。その方が、いつかの夢も叶う確率は高い。これも偏向した見方かもしれません。

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