第六十二話 夢と現実

遊びですから、夢を語らねばなりません。しかし、映画やドラマなら、夢を語るだけで終わって良いのですが、ヨット遊びは現実を遊ぶ事になります。夢を語って、現実で遊ぶ。その夢と現実があまりにもかけ離れているとしたら、長く続ける事はできません。でも、あまりにも現実ばかりでは、面白味がなくなるのかもしれません。

そこで、できる良い方法は、現実の中に、夢のある面白さを見出す事ではないかと思います。否、夢はある種の憧れのようなものではないかと思いますから、それは遠い未来にあるのかもしれません。という事は、未来に夢を置き、現実には面白さを置く。

それで、未来の夢は、もう、自由自在にヨットを操船して、スピードやスリル、感激、美しさ等々を満喫できるようになる事。ひとりであろうが、何人かを載せようが、それはもう自由自在であります。
まるで、自転車のように気軽で、スポーツカーのように速く、また優雅に、どうにでもコントロールができるようになる。これはとっても楽しい感じがします。楽器だったら、自由自在に高いレベルの演奏ができて、悦に入る。そんなセーリングです。

だから、現実には、その夢に近づけるように、日々、面白さを得ながら、楽しさを得ながら、少しづつ学ぶ事になります。それが夢の完成へのアプローチにもなります。

音楽は聞き手になる事もできます。素晴らしいコンサートホールで、素晴らしい演奏を聴く事が可能です。でも、音楽には、演奏側になる事も可能です。それは、自分が演奏して、素晴らしい演奏ができるようになるという方法もあります。その為には、楽器に精通しなければなりません。ヨットはこれと同じで、ヨットに精通して、自由自在感を高める事ができて、一歩づつ夢の完成へと近づく事ができる。これは簡単ではありません。しかし、夢が簡単に達成できたら、達成感もありません。

従って、現実において、ヨットにいかに精通していくかという道をたどる事になります。全ては夢の為?、否、それどころか、現実の面白さの為。

素晴らしいヨットで、自由自在に操船できたら、どんなにか気分が良いでしょう。これは恐らく想像を絶するかもしれません。巧みな楽器演奏家の技術を、できるものなら、お金出してでも買いたいぐらいです。それと同じように、技術に優れるというのは、非常に価値が高いと思います。それだけに、習得するのは簡単ではありません。

でも、過去の長い道のりを、進んできただけのものは積み上がります。そして、その恩恵もあります。どうせヨットやるなら、セーリングにおける自由自在度を高め、その面白さを得ていただきたいと思います。

ヨットをやるに二つの方法があると思います。ひとつは楽しさを求める事です。仲間や家族と楽しい時間を過ごす。そういう環境を求める。もうひとつは、自分次第です。自分が上手くなって、環境変化にできるだけ対応できる範囲を広げる事。どちらでも好きな方法を取って良いし、両方を使い分けて良い。でも、それを意識的にコントロールしていく事が必要ではないかと思います。

それが現実で、夢は、いつか、自由自在とか、日本一周とか?日本一周をすれば夢は達成できます。それで終わりにするか、次の夢を持つか。でも自由自在は、どこかで達成したとかいう事がありません。永遠に終わらない。でも、逆に言うと、徐々にうまくなっているプロセスが分かりますから、それはしょっちゅう夢を味わっている事にもなります。プロセスにおける進化こそが夢という事もあると思います。何といっても、自由自在に操船できる自分を想像してください。何と気持ちの良い事か?環境さえ整えば、誰でも楽しむ事はできますが、自由自在感は、誰でもというわけにはいかないのです。

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