第24話 ヨットを極める

だいそれたテーマですが、一般の極めるという匠の世界ではありません。一般に極めると
言うのは誰でもできるものではありません。ということは殆どの人はできない。私もでき無い。
でも、技を極めようなんて思う必要は無い。いかに楽しむかを極めるのです。何度も言っていま
すが、表面上の快楽だけでは無く、セーリングに浸る。

風上に上る。上にギリギリの際どい角度を走る。セールを引き込み、裏風が入るぎりぎりを走る。
ぼーっとしてたら、失速してしまう。必然的に神経は集中してきます。舵は微妙に操作される。
ブローが入ったら、さっとシートを出してヒール角度を保つ。ブローが過ぎればまた引き込む。これ
ら一連の動作は緊張を伴いますが、心地良い緊張感です。
今度は横風で少しゆったり、効率は悪いのですが、真後ろの風でジブとメインを観音開きでも走る
両方のセールがうまく風を捕まえるよう操作するには、また神経が集中してきます。こういう緊張
と緩和うまく混ぜ合わせて、その日のコンディションで最も楽しい走り方を見つけて、徹底的に
楽しむ。つまり、セーリングを極めるのは、いかに楽しむか、自分なりの楽しみ方を極めるという事
です。ですから、誰でも、その気になればできるのです。そうしたら、マリーナにかえってきて、少し
体が疲れているのを感じるでしょう。心地良い疲れです。まあ、熱いコーヒーでも飲んで、一服。
たったこれだけの事が自分自身をよみがえらせてくれるのを感じるでしょう。そう感じたら、あなたは
ヨットを極めています。ヨットをいかに楽しむかを知っているからです。これがヨットの基本であり、
醍醐味であり、ベーシンクな部分ですが、同時に究極でもあると思うのです。

ヨットを極める為にはどんなヨットが自分に合うか、どんな艤装をどのように配置すれば良いか、取り
まわしはどういう風にアレンジしようか、こういう事も考えてきます。きまった通りにする必要は無い。
自分の体力、考え方、楽しみ方、そういう自分に合わせて自分なりの工夫をこらしていく。これも、
極めるひとつでしょう。難しいように聞こえるかもしれませんが、これは自分がセーリングしていけば
誰でも自然に気がつくことです。工夫して、試し、楽しむ。この繰り返しで、味わいは実に深いものに
なります。是非,ヨットを極めてください。

こんな事が目の前にいつもある。でも、人は遠くを目指し、夢見、どこにも行かない。

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