第29話 日々のセーリング

ヨットを楽しいものにするか、退屈にするかは、この日々のセーリングの過ごし方にかかっている
と言っても過言では無いと思います。これが充実したセーリングができるなら、面白くてたまらな
いとなると、ほったらかしにはできなくなります。

何の為にヨットに乗るかと言いますと、楽しみたいからです。でも、ちょっと考えて頂きたい。殆ど
の方々が得たい楽しみとは快楽です。それは、たまに行く映画やテニスやボーリングと似たよう
な物です。たまに行って、わいわいがやがや、それはそれで楽しい。しかし、それ以上の物では
無い。だから、ちょっと忙しくなると行かないし、年に1回かそれぐらいかもしれません。それは、
それで良いのです。所詮その程度です。でも、ゴルフを好きな方は多いですね。一時期、駅のホ
ームでスウィングの練習をしている人を良く見かけました。きっと彼はしょっちゅうゴルフ場に行っ
たり、練習場で練習するでしょう。楽しくて楽しくて仕方が無い。仕事が忙しくても、何とかチャンス
があれば練習場に行こうとする。うまくなりたいからです。こうなると、単に表面上の快楽だけを
求めているのでは無いのです。もっと突っ込んで、ゴルフの奥深さにはまってしまったのです。
もし、これが年に1回しかできない事ならどうでしょうか。その為に、駅のホームでスウィングする
でしょうか。ゴルフはうまいか下手かが数字として明らかに解ります。だから、上達するのが明確
に解る。だから自然と奥に入っていってしまうのではないでしょうか。人よりうまくなりたい。その気
持ちがそうさせます。ナイスショットをすれば気分も良い。

ヨットも同じではないでしょうか。表面上の快楽や、遠くだけを目指していると、なかなか奥へは入
れないのではないでしょうか。テニスでも映画でもボーリングでも同じです。ああ楽しかった。と終
われば、それ以上のものではなくなる。本当にその奥深さを味わうには、奥に入るしかないのです。
その為には日常的でなければなりません。何をするにも同じですが、奥には奥に入った者しか解ら
ない世界があります。この楽しみを味わった人は極めた人です。前にも書きましたが、技術を極めた
人では無く、その世界を極めた人です。世界を極めた人は自然とうまくなる。ヨットの奥の深さは底
知れないかもしれません。何故なら、スコアが無いからです。レースをするなら、相手に勝つという
目標がありますが、セーリングだけなら、相手も居ない。自然と自分が居るだけです。これはスコア
が無いだけに上達の程度がわかりにくい、ですから夢中にはなりにくいのかもしれません。しかし、
ここをもう少し入っていくと、解ってきます。

ヨットは高価な買い物ですから、やるならそのヨットの持つ奥深さを味合わないのはもったいない。
表面上の快楽だけにしておくのは実にもったいないと思いませんか?もう一歩入れば良いのに。
そこで、その世界に入りやすいヨットを手に入れるのが良い。それは適切なサイズとセーリングに
重点を置いたヨットが良いのではないかと思うのです。それを気軽に出せる事。そういう条件を整え
れば、頻繁に出せて、奥に入りやすくなる。それがシングルハンドです。これで充分楽しめたら、も
はや、ヨットから離れる事はできなくなります。腕も上がる。それで、引退したら、遠くを目指すなら
そういうヨットに買い換えれば良い。最初から大きなヨット、何でもそろっているヨットにするのはどうか
と思います。それは乗れるかどうかでは無い。気軽さが無くなって、表面上の快楽だけに終わらせな
い為にです。ヨットに慣れれば、かなり大きなヨットでも動かせるようになります。その時にサイズを
アップしても良い。そして、最後に再びシングルハンドに戻ってきます。純粋にセーリングを気軽に
楽しみたくなる。年をとっても現役のヨットマンで居たい。何故なら、セーリングの奥深さは彼を離しは
しないからです。ヨットの世界を極めましょう。

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