第35話 セルフタッキングジブ

以前にも書きましたが、何故、セルフタッキングジブが流行らないのか、不思議で
なりません。シングルハンドのクルージングにはもってこいだと思うのです。それで
あるヨットオーナーのアイデアがあります。彼のヨットは25フィート、キャリアも長く
おそらく30年近いんじゃないでしょうか。以下は、このオーナーのアイデアです。

マストよりやや後ろぐらいの左右の位置にブロックを設置、彼の場合はアルミのトウ
レールにスナップシャックル付きのブロックを左右に設置。さらに、95%ぐらいのジブ
セールのクリューにブロックを設置、これら3個のブロックに1本のシートを左舷から、
左舷のブロック、ジブのブロック、そして右舷のブロックを通して、後部へリード。これで
1本のシートが左舷から、セール、そして右舷まで来ます。

右舷からの風の時、ジブセールは左舷側に来る。この時、左舷側のシートを強く引き、
右舷が固定。逆の時は、左舷シートを固定して、右舷シートを一杯引く。彼の実験に
よりますと、これで高い装置は付けなくても、簡易のセルフタッキングシステムができる。
のぼりはあまり良くは無いものの、クルージングで遊ぶに充分だそうです。

タッキングの時は風下側のシートを少し緩め、舵をきって、ジブは自動的にブロックを介
してシート間を滑り、右舷側へ移動、最後に右舷側のシートを締めるそうです。実験して
みないと解りませんが、ひょっとしたら、シートを操作する事無く、風の力だけで、セール
は左右に移動するのではないかとも思うのですが。その時にかかっているシートのテン
ションにもよりますが。

もしこれがうまく行くなら、今あるヨットのどの艇でも簡単にできますね。試してみてはいか
がでしょうか。ただ、ファーラーのジェノアは95%ぐらいまで巻きこむと、クリューの位置が
かなり高くなるセールもありますので、左右につけるブロックの位置がもっと後ろでないと
うまく行かないかもしれません。それにセールエリアもかなり小さくなるでしょう。理想的
にはアスペクト比の高いセールがあればベターではありますが、シングルハンドで気軽に
タックの繰り返しをする時などは良いかもしれません。

使えるか、使えないか、考えるより試す。面白いとおもったらやってみる。こういう姿勢で
楽しんでください。理屈はどうのこうのと言うけども、良いんですよ。楽しけりゃ、遊びだもん。
彼の口ぐせでもあり、私の好きなせりふでもあります。

理論はそれなりに、過去の経験者の集大成でもありますから、とても勉強になります。しかし
それに固執する必要は無いと思います。レーサーは勝たねば意味が無い。こういう時は理論
は正しいかもしれません。でも、理論は楽しいかどうかという観点から言えば、そうとは限らない。
やはり自分で試すべきです。遊びだもん。

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