第百話 デイセーラーは日本に根付くのか?

デイセーラーを取り扱い初めて18年。昔に比べたら知られる様にはなってきました。しかし、まだ根付いてきたとは言えません。一体、何が問題なのか? 多くのでっかいキャビンのヨットが、そうそうクルージングに行っている様には見えませんし、まして、ヨットを別荘の様に使っている方も多くは無い。だったら、何をしたいのか?

稼働率が最も高いのは、デイセーリングです。それはデイセーラーで無くてもできます。しかし、ひとりではできなかったりする事も多いし、気軽さも無いとかいう事もあります。セーリングするのに、いちいち決心しなければならないとしたら、稼働率が高いはずは無い。

欧米では、最も使われる率が高いのは、別荘的にキャビンを使う事ではないかと思います。だから、欧米ヨットがキャビン拡大競争をやるのは当たり前かもしれません。でも、その欧米でも、別荘的使い方に満足している人達ばかりでは無い。

デイセーラーが面白いのは、まず気軽である事、ひとりでも気軽に出せる事です。そして、操作が簡単であり、その上セーリングが堪能できる事です。初心者にとって、操作が簡単なのはとっても良いし、ベテランになってきますと、やろうと思えば、それなりの操作をして、その高いレベルでのセーリングも味わう事ができます。デイセーラーはセーリングそのものが魅力なのです。

ところが、その為にキャビンを犠牲にしています。前述の広い別荘的キャビンとは正反対にありますが、そういうデイセーラーも欧米から誕生しています。欧米のヨットに対する幅広さを感じます。

日本では、キャビンをあまり使いません。だからデイセーラーが良い。というのでは無く、セーリングが面白いからデイセーラーが良い。そういう認識が広がればと思います。キャビンが広いかどうかでは無く、何が面白いのか? キャビンが面白ければキャビンを使うし、セーリングが面白ければデイセーラーが良い。

実際、デイセーラーでセーリングしますと、海面は近いし、それだけでもセーリング時のフィーリングが全然違います。重心は低いし、操作は楽だし、その分いろんなフィーリングを感じ取る事ができます。デイセーラーでいろんな事をする事ができますが、でも、得意はセーリングです。そこに魅力を感じていただかねば、デイセーラーの良さは感じられないかもしれません。

価値観の問題ではありますが、でも、セーリングはヨットにとって無くてはならない最重要テーマだと思います。そこに魅力を感じる事ができたら、キャビンよりもセーリングを優先したくなります。要は、何に魅力を感じ、何をし、何を味わうか?人それぞれでありますので、みんながセーリング優先になるとは思いませんが、でも、セーリングのエキゾチック感なんか、誰もが味わった事があると思いますが、それを偶然任せにせずに、積極的に求める事もできる。そこにデイセーラーの存在価値があるかと思います。

さて、デイセーラーは日本に根付くのか? それはすなわち、セーリングという、少なくとも基本的技術を要し、そして、長年を経て、成長していくプロセスをたどる事を要求します。それには、セーリングそのものに求心力が無ければなりません。多くの方々が、旅に魅力を感じ、キャビンに想像を掻き立てられます。しかし、セーリングにはどうでしょうか?これが最大のテーマかもしれません。
セーリングそのものの魅力を語らなければならないのかもしれません。セーリングに対して、多くの方々が魅力を感じさえすれば、デイセーラーはほっといても広がっていくのかもしれません。

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