第二十四話 新艇の楽しさ

ヨットは中古でも構わない。でも、新艇となると楽しさがまた違います。どのヨットにするかという事もあるし、決めた後でも、どんな艤装にしようか? ハルカラーはどうしようか? ウォーターラインの色は? 船底塗装は?そんなこんなを考えるのも実に楽しいかと思います。

昨今、欧米ではハルカラーをネイビーなんかにする事が多くなりました。ちょっと締まった感じがします。しかし、ちょっと注意なのが、この色です。ネイビーに限らず、濃い色です。基本的に、そのカラーの素材はゲルコートです。ゲルコートは硬い塗料なので良いのですが、いかんせん紫外線には強くない。それで、濃い色は、紫外線の影響を受けて、色褪せてきます。見かけの問題です。

この点、白色なら、紫外線の影響を受けても、あまり解りません。目立たない。だから、最近では、造船所で受けるカラーの変更の場合、ゲルコートを使わなくなってきました。オールグリップ塗装なんかをするようになってきました。オールグリップは、硬い塗料で、紫外線にも強いと言われます。
これもウレタン系の塗料で、これをするには、それなりの塗装ブースが要求されますから、日本で塗装する場合は、同じウレタン系の塗料、車と同じですが、これを使います。

車の塗装は昔は色褪せているのを見かける事もありましたが、最近の塗料は優秀で、何年経っても、きれいです。ただ、オールグリップに比べると硬さの面ではオールグリップにゆずるようですが、でも、充分だと思います。

いずれにしろ、濃い系の色は、フェンダーが古くなって船体と擦れ、細かい擦り傷が目立ったりもしますので、要注意、かもしれません。また、ゲルコートの濃い色にしても、年に一回ぐらい、船体をバフ掛けして、古くなった表面を磨いてやれば、持ちは違うと思います。

また、話は変わりますが、最近の新艇では、多くがセールドライブエンジンを採用するようになりました。プロペラが船体と並行に並ぶので、従来のシャフト式よりも効率が良くなります。また、シャフトに必要だったブラケットも必要無くなり、エンジン音がより静かです。スタンチューブの漏れも無いし、それに、プロップウォークと言われる、横に動く作用も無いと言われます。マリーナに戻って、停止させる為にバックギヤに入れますが、この時、プロペラの回転方向によっては、後方が、右とか左に振れる。これがセールドライブには無い。プロペラシャフトのヨットでは、斜めに入っているからプロップウォークが発生します。

プロペラはフォールディングプロペラです。セーリング時に閉じます。だから水流の抵抗が軽減されます。水は空気の800倍の密度だそうなので、小さなプロペラと言えども、抵抗になると非常に大きい。が、しかし、それ故に、あんな小さなプロペラで、でっかい船体を走らせる事ができるとも言えます。

ジブのファーリングシステムは、もう完成の域かな? どれをとっても、そう遜色は無いかと思います。ただ、最近はドラムがデッキより下に設置してあり、その分、セールエリアを少しでも大きくするというデザインもあります。それに、ローチ(リーチ側の膨らみ)を少しでも取って、そこに縦のバテンを入れるデザインもあります。少しでもという試みですね。

メインセールはと言いますと、最近目立ってきたのが、スクウェアートップのメインセールです。カーボンマストを設置して、バックステーは無くし、より大きなメインセールを可能にしています。かなりのハイパフォーマンスを目指す。スポーツレベルの高さを実現するとでも言いましょうか。それでも、シングル可能です。ただ、スポーツレベルが高くなる分、強風においては、より細かい操作が求められる。もちろん、そういう操作を楽しむ事になります。その結果のセーリングもより速くなりますから。それが目的です。

全てのデイセーラーは、そのパフォーマンスは高いです。しかし、各モデルによって、そのスポーツ度が違い、バリエーションがあります。ですから、どの程度のスポーツ性を求めるかによって選択は違ってきますので、そのあたりを検討する事になると思います。クラシックなデザインやモダンなデザインがあり、これから一生つきあっていけるヨットばかりです。何故なら、セーリングの探求に終わりは無いからです。また、デイセーラーは造りとしても、一生物です。

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