第五十五話 質を問う

デイセーラーが問うのはセーリングパフオーマンスとその質です。パフォーマンスについては、モデルによってバリエーションがあります。しかし、その各パフォーマンスを支えるのは、船体の造りの質に他なりません。

デザインや重量はパフォーマンスに影響し、その重量やデザインから得られたパフォーマンスを支える造りの質がどうなのか? これによって、パフォーマンスにも影響しますし、何といっても、フィーリングに影響を与えます。何も、誰よりも速くとは思わないにしても、セールフィーリングにはグッドを感じたい。

多くのデイセーラーがサンドイッチ構造のバキューム/インフュージョン工法を採用しています。これとて、熟練の技術が要求されます。そして、重量が軽ければ、軽い程、その軽い中で、強く造る事を要求されます。重くても構わないなら比較的簡単になりますが、それではパフォーマンスが減じられていきます。

船体が硬いと何が違うのか? 何といってもセーリングにおける滑らかさです。ある造船所はシルクの様なという表現をしましたが、こればかりはデータとして数値化する事ができません。ヨットがセーリングできるのは当たり前ですが、そこに質を求め、滑らかさを求めています。

実際、この滑らかさを感じたりしますと、実に気持ちがいいものです。この実現の為に重要な事は工法もありますが、構造もあります。素材もあります。船内のあらゆる家具類は船体に積層され、強度の一部になります。バルクヘッドの数も強度になります。

結局、職人の手間をかける事になります。だから、少量生産になります。造船所が造るのは、この船体です。艤装品は他のメーカーが造ります。もちろん、その艤装品の設置の仕方にも違いが出ます。結局、艤装品もセールも、船体以外にいろいろありますが、基本中の基本は船体にある。
そのデザイン、構造、工法、素材、これらがそのヨットの質を決める事になります。

もちろん、そのヨットのコンセプトによって違ってきます。それで、デイセーラーは、セーリングを主と考えたわけです。セーリングにおけるパフォーマンスと質です。その代わり、キャビンはシンプル化しています。もし、両立させようと思ったら、サイズを大きくする事になります。しかし、サイズが大きくなると、気軽さが失われかねない。あくまでシングルハンド前提における気軽さです。

デイセーラーにも大きなサイズがあります。それもシングルハンド仕様です。この辺りの考え方は、従来のシングルセーリングにプラス、クルージング機能としてのキャビンを拡充させた事になります。でも、ボリューム的には、クルージング艇程のボリュームにはしません。

デイセーラーでセーリングを楽しむ要件として重要な事は、パフォーマンス、操作性、安定性、滑らかさ、そして、気軽さは必要だとは思います。

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