第七十七話 趣味への誘い

レジャーはその場を楽しむ事、そして趣味はより深さを知ったり、成長を望む事。とするならば、レジャーはその瞬間であり、趣味は長期にわたる継続という事になります。

ヨットの場合を眺めてみますと、多くの場合で、それはレジャーを目指している事が多い。業者の広告にしても、造船所が造るヨットにしても、そしてオーナー側もそうだろうと思います。しかし、恐らく、レジャー目的だけなら、手に入れて2、3年で、或は、もっと短い時間で、目的は達成してしまってしまう。

青い海、気持ちの良い風、爽やかさ、それで満足できる期間は短い。レジャーには限界があると思います。何故なら、求めている事に変化が無いから。ある特定の場面だけしか想像しないから。だから、レジャーオンリーでは飽きてくる。

ヨットに限らず、あるひとつの事をするにあたって、長く続ける事は、それは趣味の範疇に入ってくる。変化を求め、成長を求めるしか、人は長く継続できないと思います。最初は良いんです。最初の2、3年ぐらいなら。でも、その最初の2、3年で、レジャーとしてできる事は全て終わるでしょう。だから、続かなくなる。続かなくなるという意味は、最初の頃程楽しさを感じなくなるからです。それゃあ同じ次元の事をやってたら、それが何であれ飽きもする。

この事は極めて重要な事だと思います。長く続けるには、積極的に関わる気持ちが無いと、楽しむだけなら飽きてくる。恐らく、1ヶ月に1回も使わない。せいぜい、数ヶ月に1回程度かな? それで満足と言われてしまえば仕方無いですが。

レースを楽しむ人が何故続けられるか? 変化を見出し、成長への工夫をし続けるからだと思います。全ての趣味は同じだろうと思います。クルージングにしても、あっちこっちに行く。行った事が無い場所でも、次々に行きたくなる。それはもう趣味でしょう。趣味には、それなりの面白さがあるからですが、苦労もある。工夫もしなければならない、発見もある。でも、何といっても、面白さがある。

もし、レジャーとしてヨットを始め、何度も行きますと、飽きてきます。しかし、もし、それでも、行き続けるとしたら、そのうち乗り方が変わります。レジャーに留まる事はできなくなります。それは行き続ける事によって、何らかの発見があったり、工夫したり、何かが変わるからです。変わらざるを得なくなると思います。でも、大抵はその前に行く回数が徐々に減ってきます。一ヶ月に1回となり、数ヶ月に1回となり、そのうち年に1回とか2回とか。日本人気質は、レジャーヨットには向かないかもしれません。日本人は勤勉でまじめでとか言われます。その気質なら、趣味的な遊びにした方が良いと思う次第です。

ですから、セーリングしましょうと言います。セーリングに面白さを見出す。そして、より知りたい、上手くなりたいという気持ちを持ちます。すると、面白さが解りますから、長く続く。続けたくなる。そのモチベーションを維持していく為に、たまにローカルレースに参加したり、そういう工夫も使えば良いと思います。この場合、レース目的では無く、レースはアクセントみたいなものです。

無理にでも、マリーナに行って、セーリングをし続ける。飽きた感を感じたにしても、無理にでも出し続けるとしたら、きっとそのうち何かを発見すると思います。そうしたら、レジャーが趣味に変化していくと思います。例えばですが。ちょっとした処で、自分で考えたり、工夫する気持ちが出てくるだけでOKかと思います。別にプロになるわけじゃない。それどころか。もっと下の方のレベルかもしれない。でも、それで良い。重要な事は、自分自身がどんなレベルであろうが、変化している事に気付き、それを続ける事が面白くなる事ですから。

レジャー的楽しさは、人を惹きつけます。楽しさが想像できるからです。ピクニックセーリングも未経験だとしても、ある程度想像できます。それはレジャーです。もちろん、レジャーも良いが、でも、本当に面白さを手に入れないと、長く続ける事はできないと思います。

ヨットの知識や技術は、後で、いくらでも身につける事ができます。それらが問題じゃない。重要な事は楽しさから面白さへの変化を見つけられるかどうかではないかと思います。ですからセーリングです。セーリングと言えば、すぐにレースと言う。そんな事はありません。

シングルハンドで、神経を集中して、セーリングしてみてください。是非、是非! シングルじゃ無くてもいいのですが、シングルの方が集中し易いと思います。セーリングを趣味にして、そこに上手くなる。最も身近で、時間もあまりかからなくて、手軽で、いつでもできる。だからこそ、その深さを求めた方が良い。そういうセーリングの中において、グッドフィーリングを得ていく。そのフィーリングはレジャーの次元ではありません。遥かに超えてます。古い表現ですが、しびれます。

この事は、ヨットに関するあらゆる事の中で最重要課題ではないかと思います。

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