第九十八話 B 38

イタリアのデザイナー、ブレンタ氏が最初にデザインしたデイセーラー、B38です。このデザインが、その後のヨーロッパ系のモダンデザインに大きく影響を与えました。現在ではB60まであります。さて、今回のB38、もちろん、シングルハンドの、速いデイセーラーです。

全てのデイセーラーは、ひとりで動かせるようになっています。それで、大きなサイズになると、操作は当然、電動や油圧となり、スイッチひとつでできるようになっています。セーリングの面白さは、楽にできるスイッチでは無くて、どの程度調整するかによって、セーリングが変化しますから、それが面白さですから、楽に、でも、面白い。デイセーラーは、小さなヨットも大きなヨットも、操作は簡単に出来ます。 そして、それで起こす変化をセーリングして味わいます。

排水量は4,300kg、バラストは2,200kg、セールは85.8uです。それで、SADRは32.8にもなります。かなり速いです。大きなサイズにするメリットのひとつは、大きいだけに、排水量は重くなるものの、バラスト重量をより重くできる事です。より速いスピードを得られる事と同時に、安定性も高くできます。ただ、そのバランス配分をどうするかはデザイナーの考えひとつです。

前話のアレリオン38と比べますと、排水量で1,550kg軽く、そのうち500kgはバラストが軽くなっており、セール面積は10.5u大きくなっています。パフォーマンス的にはB38の方が速い。しかし、安定度は、キールデザインの違いもあるんですが、アレリオン38の方が高いと思います。つまり、これは狙ったパフォーマンスの違いの結果です。サイズアップし、バラストを重くし、そして、セール面積をどの程度にするかでパフォーマンスが決まります。普通は、アレリオン38のパフォーマンスで充分楽しめると思いますが、特に高いパフォーマンスを求める方には、B38です。もし、B38の安定性をもっと高めるとしたら、セール面積を小さくする事になります。それはリーフする事と同じと考えます。このパフォーマンスの違いはデザイナーの考えの違いであり、キールデザインも考えると、B38も結構安定度は高いと思います。パフォーマンスと安定度のバランスをどう考えるかですね。

このB38も、操作は当然ですが、全てボタン操作、今は当然ですが、これがデビューした時は少し驚きでもありました。ツウィンラットで、いかにも速そうなデザイン。ドラフトは2.25mあります。その後、 1.95mも造ってます。速いヨットをシングルで楽に乗る。そういうスタンス。もちろん、レースも楽しめます。ピクニックだって面白い。このサイズにして、デイセーリングに徹しています。いかにもイタリアのスポーツカー的考え方。
  
  
  
  

  
  
  

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