第十三話 セール考




     セールはヨットにとっての主機と言われますから、セーリングに重要な役目を担っている事になります。
     これまでSADRを見てきましたが、セールは面積だけが重要なのでは無く、そのセールの質も大きく
     影響します。

     通常、クルージング艇に多くみられるダクロン生地は、丈夫で、紫外線にも強い。しかし、重いし、風圧
     で伸びる。重いのは、微軽風時に、その重さで、風をはらむ事ができなくて、だらりと垂れさがる事も
     あります。そうなると推進力としては無くなります。また、伸びるというのは、強風時の風圧でセールが
     伸びて、ドラフトを後退させて、深くなって、前進する力が減少し、大きくヒールさせる力が増えていく。
     それで、これを調整する必要があります。

     これはこれで良いのですが、もし、そのヨットのパフォーマンスが高くなればなる程、良いセールに取り
     替えるとセーリングの違いが顕著に現れてきます。セールが軽くなり、軽風でも風をはらんでくれるよう
     になったり、伸びにくいセールで、ダクロンの時の現象が、減じられたりです。ブローが加速になったりします。

     そういう意味で、セールは非常にセーリングパフォーマンスに影響を与えます。スポーツカーのエンジンの
     選択みたいなものでしょうか。その良いセールと言いましても、いろんな種類があり、いろんなメーカーが
     ありますので、もし、そういう事を考えられるのであれば、セールメーカーに尋ねられても良いかと思います。

     デイセーラーも、クルージングのパフォーマンスからレーサーレベルまであるわけですから、セールを変え
     ると、ハイパフォーマンスになればなる程、その違いが顕著に現れます。

     それからもうひとつ。もし、セールをハイテクにする場合、ハリヤードも変えた方が良いです。セールに
     風圧がかかり、ハリヤードが伸びたのでは、せっかくのセールの本領を発揮できません。これはセールと
     セットと考えた方が良いですね。

     さて、セールは、ジブとメインの他、もう一枚使いますが、デイセーラーは小さなセルフタッキングジブと、
     それをカバーする大きなメインとなり、上りは良いとしても、下りになると、ジブが効率悪くなくなるので、下
     り用のセール、ジェネカー(非対称スピン)を使います。アレリオンの様に、ジブブームがあれば、ジブがそ
     のまま使えますので、必ずしも必要では無いんですが、でも、使えば、セール面積は大きいだけに、スピー
     ドが全然違ってきます。

     SADR値が高いとそれだけ微軽風でも速くはなりますが、所詮は微軽風ですから、実際に走って、充分な
     ら良いし、もっとなら、ジェネカーを使う。それともうひとつ、お勧めなのが、ジェネカー兼用の微軽風用セール。
     これを上りと下り、兼用で使うという事です。ジェネカーより浅く、ラフをほぼ直線にして使いますから、ジェネ
     カーより上りに使えます。でも、その代わり、ジェネカー程には下れない。レース向きではありませんが、一枚、
     第三のセールを持つなら、重宝するかもしれません。もちろん、ファーリングにすると、楽です。

     これで、上りから下り、微軽風から強風、あらゆる状況でのセーリングが、より面白くできると思います。長い
     期間のセーリングを考えたら、第三のセールは欲しい処です。面倒くさいなんか言わずに、やってみる事をお
     勧めします。慣れの問題です。今まで退屈だった微軽風で、ヨットが生き返りますね。もう、エンジンかけて
     帰ろうなんて思わなくて良くるなるかもしれません。遊びはどう演出するかで、面白さも違ってくると思います。

     アクションを起こして、その反応が返ってくる。それが面白さには必要なのではないでしょうか? 


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