第十六話  Admiralty 30




        エキセントリックなヨットをひとつご紹介しておきます。デイセーラーであり、イージーハンドリングの
       レーサーでもある。キャビンと呼べるスペースは無く、荷物置き程度。非常に細く、軽く、バラスト比
       が何と63.6%というヨット。もちろん、ジブファーリングで、セルフタッキングシステム、パフォーマ
       ンスは非常に高い。

       全長9mに対して、幅はわずか1.73mしかありません。排水量は1,100kg、そのうちバラスト重量
       が700kgです。セール面積は40uで、SADRは38.2にもなります。こんなヨットでセーリングを遊ぶ
       人達も居ます。ちょいと出して、すっ飛ばしてくる。そんな感じでしょうか。このヨットのセール面積を下げ
       て、30uにしても、それでも、SADRは28.7にもなります。これでも相当速い。でも、それじゃあ、この
       ヨットの意義が薄れてしまうのかもしれません。世界はどんどん進んでいます。

       もちろん、こういうヨットですから、ワンデザインレースも盛んに行われています。でも、レースじゃない時
       はデイセーラーとして気軽にセーリングを満喫しているわけです。ひょっとすると、デイセーリングの時は
       リーフして、気軽にやっているかもしれません。でも、それでも速い。ヨットは遊びなんです。遊びは面白く
       なくちゃいけません。自由な発想で遊ぶ。欧米人は遊びに関しては達人です。

       このヨットの好き嫌いはあるでしょうが、でも、何だか、欧米人の遊びに対する自由度を感じます。

       SADRについて、常に注目して書いてきました。本来であれば、セール面積をIJPEで算出するのが
       公平に比較できるとは思いますが、でも、デザイナーが設定したセール面積があり、そのヨットにどんな
       セールを設置するか、例えば、大きなローチを持つメインとか、それによって随分違ってきます。
       それで、これまで記載してきましたSADRは、全て、デザイナーの設定セール面積で計算しています。
       現実に、そのセールで走るわけですから、そのうえでの比較とした方が現実的だと思います。しかも、
       レーサーでは無いので、セール交換したりしないわけですから。


  
       
  
     

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