第十七話  カスタムデイセーラー 60




        アメリカで60フィートのデイセーラーが木造にてカスタム建造されました。このサイズでデイセーラー
       としての徹底ぶりはあっぱれとしか言いようがありません。何しろ、キャビン内の天井の高さは、最大
       で1.75mしかありません。しかも、寝泊りする為のバースはひとつも無し、あるのは、このヨットを全
       て、ボタンひとつでコントロールできる様々な、電動、油圧システムの装置ばかり。

       マストはもちろんカーボン、船体は木ですが、全体をカーボン補強、排水量は18,900kg、キールは
       バルブキールで、吃水が3.66m/2.44mと油圧でアップダウン。バラストは7,200kg。セール
       面積は265uです。それで、SADRを計算しますと、37.7になります。もはやビッグサイズのこの
       パフォーマンスには驚きませんが。

       もちろん、バウスラスター、スターンスラスターが付いて、ジョイスティック操作です。全てのコントロール
       はふたつのヘルムステーションから、ボタン操作できます。コクピットのテーブルも、ボタンで床からせり
       上がってきます。オーナー曰く、シングルハンド操作が条件で、ひとりでも静かにセーリングができるよう
       にとの事。この潔さには脱帽であります。

       前話のAdmiraltyとこのヨットは全く別物の様でありながら、同じデイセーラーとしてのコンセプトを共有
       しています。こういう広がりが出てきたという処に、デイセーラーの浸透度が伺えます。今日、デイセーラ
       ーはもはやマイナー的存在では無く、定番になってきた証拠ではないかと思います。このサイズで、ここ
       まで徹するのは難しいし、ついもったいない様な気がしてしまいますが、でも、徹する事で、遊びの広がり
       を限定する事で、逆に、その遊びを深く味わう事ができるのかもしれません。何でもできます、というより、
       これが得意という方が、より面白いとも考えられます。
      
       デイセーラーは、今後ますます面白くなっていくと思います。どういうパフォーマンスを、どういう形態で
       造っていけるか? 可能性は広いと思います。


  
  
  
  
     

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