第二十四話 ヨットあれこれ




         たまに、このヨットは速いとか、話題になる事がありますが、仕様を見ると、やっぱり排水量が軽い。
        その軽い排水量を造ろうという事こそが、速いヨットを意図しているわけですから、船型もキールデザイン
        もセールエリアも、その意図したパフォーマンスに従う事になります。後は、実際のセール面積とバラスト
        重量との比較をしていけば、同じコンセプト同士のヨットならば、だいたい想像がつくと思います。
        そう考えれば、細かい違いはあるにせよ、だいたいの想像がつくのではないかと思います。

        ただ、ヨットによって、強度をどこまで持たせているか? また、他の細かい部分での違いはあります。
        最近、広く使われるようになってきたバキューム/インフュージョン工法も、例えば、ハルとデッキだけだっ
        たり、船底のストリンガーも同じ様にしたり、また、バルクヘッドをパテ接着だったり、ちゃんとハルと
        デッキに積層したり、バース等の家具類も積層したりする造船所もあります。これらは、表だっては見え
        ない箇所ですが、その手間をかけると船体強度を高める事になり、セールフィーリングに影響してくる。

        サイズが大きくなれば価格も高くなりますし、質を高めれば、やっぱり価格も高くなります。できればサイズ
        を落としてでも、質を求めた方が、セールフィーリングも良くなると思います。がっちとりしたボディーとそう
        で無いのとでは、想像してみても違うだろうな〜と思います。

        いろんなヨットを見てきましたが、最近の傾向としては、カーボンマストが多くなってきた事と、比較的サイ
        ズが大きくなると、電動ウィンチの設定も多くなってきました。時代はシングルかせいぜいダブルハンド、
        それで、高いパフォーマンスを、楽に味わうという事かと思います。

        セールについては、殆どがオプション設定です。昔はダクロンのクロスカットが多かったのですが、セーリン
        グを重視するヨットは大抵はオプションで、いろんなセールが出てますから、オーナーに選択して頂く事が
        基本になっています。

        また、カーボンマストですが、カーボンは軽いという印象がありますが、最近では実際持ってみますと、それ
        程軽いわけじゃない。どうも、強度を重視して、アルミ以上の強度を持たせているんじゃないかなと思いま
        す。その理由は、断言はできませんが、多分、セールの進化によって、伸び難いセールがどんどん開発
        されてきたので、ステイ類によりテンションを高めて、がっちり固定する。セールに強いストレスがかかって、
        高い強度のマスト/ステイで支える。そうなると、船体にもさらに高い強度が求められる。そんな感じかな? 
        パフォーマンスを高めれば高める程、そういう要求になっていくんじゃないかと思います。
       
        大きなヨットは豪快で、高いパフォーマンスでも楽に走らせられる。最近、大型艇で少しづつ採用されるよう
        になってきたのが、通常の電動ウィンチでは無く、円筒形のキャプティブウィンチという、シートを巻いたり、
        逆回転して、シートを出せるウィンチ。これで、シートの出し入れがボタン操作でできる。また、シートのリー
        ドブロックを移動させる油圧装置もあります。便利な世の中です。

        でも、一方で、小さ目のヨットは、制御し易くて、気軽にスポーツ感も遊べる。これも良い。電動も良いけど、
        直に自分の手で力を感じながらの出し入れというのも面白いと思います。いすれにしろ、セーリングに意識
        を置いて、試行錯誤しながら走らせるというのが、やっぱり面白いと思います。
       
        純粋にクルージングのみであれば、必ずしも、現代のクルージング艇の方が良いとは思えない事もありま
        すが、事、セールパフォーマンスに関して言えば、昔のヨットより、現代のヨットの方が、確実に優れている
        んじゃないかと思います。

       

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