船体剛性の高いヨットで、ある程度のパフォーマンスの高さを持つヨットでセーリングしますと、滑らかさを感じます。それに前話の反応の良さもあいまって、これが本当に気持ちが良い。セーリングの上質感を味わえます。それがそのヨットのセーリング全体のベースにもなってきます。ですから、この剛性は非常に重要です。
ヨットの造船は、矛盾する要因を何とかしたいという技術の戦いになります。軽い排水量なのに高い船体剛性、なのにバラストは重く、しかも反応は良くという具合です。排水量が重くて良いなら、或いは、ただ速いだけなら、まだ比較的簡単になりますが、そうはいかないのがセーリングです。
これらはデザインもありますが、船体の構造、素材、工法、施工方法によって左右されてきます。現代の最新技術では、バキュームインフュージョン工法が取られます。グラスと樹脂の最適な比率をコントロールでき、ハンドレイアップの2.5倍の強度と言われます。そして、これをどこまで採用するかにも寄ります。例えば、非常に排水量の軽いヨットでは、ハルやデッキは当然ながら、船内のバルクヘッドを含めたあらゆる部位、ストリンガー等々全てにこれを採用しています。船体を軽くし、そしてバラスト重量を重くしています。しかし、どこかで妥協は必ず必要になります。ただ、デイセーラーの目指す処は高いレベルでの妥協です。接合はもちろん、パテ接着では無く当然積層します。
この船体剛性はスピードにも影響を与えますが、最も影響を与えるのが感性です。セーリングは感覚が大事ですから、走っている時に感じる滑らかさは、何とも良い気持ちなのです。前話でも書きましたが、我々が求めているのは絶対スピード値では無く、風の変化に対する反応です。ヨットが反応してくれて、それを感知できる感性が重要です。絶対スピードは吹かなきゃ走らないんです。ただ、速いヨットは反応が良い。そして船体剛性が高かったら、そのフィーリングが実に良いです。
船体剛性が低いからといってぶっ壊れるわけじゃない。船体が捻じれているだけです。バックステーを強く引いたら船体が反ってくる。でも、ぶっ壊れるわけじゃない。安全には問題があるわけではありません。
そんな事よりフィーリングなんです。あるヨットのクルーをされている方、初めてご一緒した時に、何だか走っている感じが全然違いますねと言われた事があります。ただ真っ直ぐ走っているだけで、風速もそんなには無かった。でも、違う。これなんです。たかがフィーリング、されどフィーリングでありますね。という事で、反応が良くて、船体剛性が高いヨットは面白い。
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