第五十話 無意識



      
我々は多くの事を無意識にやっている様です。新しい事を始める時は誰でも意識してやりますが、慣れてきますと、無意識、反応的にそれをする事ができます。車の運転なんかは典型で、いちいち考えながら運転せずとも、ちゃんと危険を避けて走る事ができます。

それで、意識しなくてもできる様になった事で、運転しながら、いろんな事を考えたりします。車が移動手段である限り、それでも構わないのかもしれませんが、しかし、そうなると車というのはそれ以上にはなり得ません。一方、ドライビング感を楽しむ人達は、慣れた意識が、より一層高いレベルでのドライビング感を求めて集中していると思います。だからスポーツカーを選択したりするんだろうと思います。

セーリングを考えますと、同じ事が置きます。最初は真剣に取り組み、そのうち慣れたら反射的になります。問題はこれからで、セーリングが移動手段ならばそれでも良いんですが、セーリングそのものが目的である時、慣れて、そこに留まればそれ以上にはなり得ません。

デイセーリングの目的はセーリングそのものを味わう事。そうすると、慣れて、意識に余裕が出てくるから、一層そのセーリングに意識的に集中すればこそ、今まで気が付かなかった事にどんどん気が付く様になれる。そうすると、慣れてきた操作にも変化を求めるようになり、上手くなっていく。セーリングを楽しむというのは、そういう事ではないかと思います。だから、セーリングが面白くなる。

つまり、慣れていく程に、意識に余裕が出てきて、その意識をどう使うか次第という事になります。もし、集中する事を続ける事ができたら、セーリングの世界はもっと広がっていくと思います。重要な事は意識がどこにあるか? 無意識は単なる習慣になってしまいます。だから普通になってしまう。だから、いつも何か面白い事は無いかと探す事になります。

セーリングを無意識から意識的に変える事で、セーリングから味わえる世界は全く違ってくる。その味わいを得ようと積極的に動くのがデイセーラーだと思っています。何故なら、シンプルで、セーリングに特化しているので、そうしやすいからです。意識的にやってること、無意識にやってしまう事、そこをまずは意識してみたら良いんじゃないかと思います。これからのグッドセーリングライフの為に。

慣れる事は良い事であり、そのもっと先に進める事にもなります。何だか、便利艤装を採用する事と同じな様な気がしてきました。その慣れと便利は、それを享受して、もっと先の世界を味わう為に、意識的に使うかどうかにかかっているのかもしれません。

スピードパフォーマンスももちろん重要ですが、意識を注いで味わうフィーリングは、また別な処にもあるような気がします。ところで、下の写真は木造艇です。SADR16.81.クルージング艇ぐらいの数値です。
ただ、これもその味わいという点では面白そうです。



        

次へ       目次へ