第七十一話 スピード以外の魅力



      
スピードは魅力のひとつには違いない。しかし、ある程度スイスイ走れるフィーリングを得られるなら、何も超スピードを狙うより、その他の魅力も見逃せない。それがデイセーラーの魅力であり、様々なバリエーションがある所以でもあります。

アレリオン26を100年前にデザインしたハーショフ氏のヨットが、今でも建造される所以がここにあります。セーリングに対する人の感じる魅力は様々ですから、それに最も応えているのがデイセーラーなのではないかと思います。だからこそ、こぞってデザイナーはデイセーラーをデザインしたがる。

ある人は、現代のコンピューターソフトを使えば、速いヨットをデザインするにそう難しく無いと言っています。しかし、スピード以外を創造していくのはなかなか難しい。デサイナーのセンスの問題かもしれません。人は五感を通して、波や風の音を聴き、顔に当たる風を感じ、体でヨットの動きを感じ、目で見て速さを感じます。そのフィーリングのひとつひとつにいろんなバリエーションがあります。それらを創造していくのは、なかなか難しい。デザイナーのセンスが光ります。

前にも書きましたが、アレリオン28はハイスピードでは無い。しかし、今でも高い人気を誇っているのはスピード以外の魅力があるからです。特にアメリカのデイセーラーなんかは、スポーティではあっても、超ハイスピードを狙ってはいません。そして、全てデザインはクラシック系に属します。排水量はもちろん軽いのですが、でも、ある程度は重さを確保してバラスト重量を重くしています。そしてセーリングに滑らかさを感じます。一方、ヨーロッパのモダン系にはより軽快感があります。

いろんなフィーリングがあって、ますますデイセーラーは面白くなります。安定感、スピード感、滑らかさ、美しさ、操作感、セーリングには数値では表せないフィーリングは非常に重要な要素だと思います。

        

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