第24話 独り言
舵の本を眺めてみると、どれもが美しい、世界最高のヨットに見えてくる。一体、どれが良くて、 どれがたいした事なくて、どうやって見分けられるだろうか。舵を眺めながら、どのヨットに興味 がわいてくるだろう。広告を出す身としては、それが難しい。いつも頭を悩ます。今では、インター ネットというすごいものが出来たおかげで、ホームページを見てもらう事で、かなりの事が伝え られるようになったという事はとてもありがたい。でも、やはり、それでもどれが良いのか解らない だろうな〜。 最近の広告で気がついた事はバラストの重量の記載が無い事だ。ついこの間までは排水料、と バラスト重量が記載されていた。ところが、最近のヨットにはバラスト重量が書かれていない事が 結構ある。これは何故か?ちょっと、ひねて考えてみると、バラストを記載すると、簡単にバラスト 比が計算できる。これがまずいのではないかと勘ぐってしまう。バラスト比だけでそのヨットの復 元性が解るものでは無いが、ひとつの大きな参考にはなると思う。おまけに、水線から上部の 構造物がかつてよりも大きくなっているので、本来ならば、バラストはもっと重くなっていなければ ならないと思うのだが、実際調べてみると、30%無いものが多い事に気づく。まあ、あまり乗らない なら関係無いかもしれん。でも、時が経って、殆どのヨットが同じようになって、これが当たり前、という 事にならなければ良いなとは思う。前に紹介してきたヨットは、バラスト比が40%〜50%オーバー というものばかりで、おまけに水線から上の上部構造が小さい。そうすると、バラスト比だけでなく、 船体自体の重心も低い事になる。こういうヨットに乗ると、本当に心地が良い。安心だし、コントロール がしやすく、またセーリングが面白くなる。でも、キャビンの小ささは一般の人々を魅了する材料には ならないので、小さな工房で少量生産、一部の人達を楽しませる事になる。まあ、みんなが、みんな こういうヨットが良いと思いはしない。一般はセーリングしないのだから。 バラスト比が低いかわりに、幅の広さで復元性をかせぐというコメントがどこかにあった。それも事実 だが、どこまでカバーできているのかは良くは解らない。でも、それなら何故、セールエリアを小さく するのか、それも納得できない。最も面白いのは、復元性が高く、そしてセールエリアも大きいヨット それなら、セーリングを多いに楽しめる。 昨日、あるオーナーの奥さんの話、奥さんはこういったそうだ。”今日は風が無いのでセーリングはで きない、今日は風が強いのでセーリングができない。じゃあ、一体いつ乗るの?ヨットは風があった方 が良いでしょ?”これにはオーナーは明確には答えられなかった。1年365日、絶好に日は一体何日 あるだろうか。それに、出る時は程よい風も帰りは強くなる事もある。これでは、セーリングを楽しむ なんてできないし、動かなくなるのも納得だ。じゃあ、ちょっとサイズを落として、取り扱いしやすい サイズにして、高い復元性を持つヨットにしたらどうでしょうか。風が無いなら軽いヨットも重いヨットも 同じ事。微風になってくると、軽いヨットが走り出す。その後を重いヨットが追いかける格好になる。そ れで、もっと吹いてくると、軽いヨットはセールをリーフしだし、重いヨットは本領発揮、フルセールで エキサイテキングなセーリングを楽しめる。クルーがたくさんいた時代なら、どうにでもなるだろう。でも、 今はクルー不足の時代だから、復元性はもっともっと重要なはずではないか。それでも、復元性の小さな ヨットに行く理由は何故か。セーリングにはあこがれず、キャビンにあこがれるからだろう。キャビンにあこ がれれば、セーリングはしなくても良い。 かつて、メインファーラーがもっと増えるだろうと言った。その通りになってきている。でも、今では30フィート クラスでもメインファーラーという設定がある。でかいヨットならいざしらず、小さなヨットでもメインファーラー というのはどうかと思う。ますます走らないヨットになってしまうからだ。キャビンの大きなヨット、バラスト比 の低いヨット、軽いヨット、マストが低いヨット、そしてメインファーラーのヨット。セーリングを楽しもうという気風 には無い。機帆走でどこかに行くしか楽しみが無い。まあ、これも流れのひとつ。それが楽しいと思えれば それで良い。でも、そこにエキサイティングな帆走、ヨットの本当の姿がすぐ目の前にあるという事だけは 忘れまい。 |