第3話 キール
キールは錘、おもりには鉄を使っている場合と鉛を使っている場合がある。もちろん、鉛の方が比重 が高いので、同じ大きさなら、より重い。という事は同じ重さなら小さくできるという事にもなる。それ に錆びないし、柔らかいので、仮に何かに当てても、鉛が自ら削れる事によって、衝撃緩衝にもなる 鉄のキールの場合は、何かを当てた時は衝撃がそのままキール取りつけボルトにきて、そこに、 クラックが入る事もあるし、水漏れにもなりうる。ただ、鉛の方が値段が高い。 キールはスタビリティーの役目をしているので、重ければ重い程、風の抵抗に対して、船を起こそう とする事になるが、重ければ、ヨット全体の重さが重くなるので、スピードは落ちる。セール面積との バランスが問題である。最近では全体重量のうち、バラストが締める割合が減ってきている船も多い。 全体の30%以下というヨットもある。反面、キャビンが大きくなってきているので、トップヘビーという 事になり、それでセールが大きければヒールし易いし、クルーをたくさんバラスト代わりに乗せて、起 こして走るか、或いは、セール面積を小さくするかという事になる。大勢でいつも乗るならまだ しも、ショートハンドならキールは重い方が良い。もちろん、キールだけの問題では無いが、バラスト が重くて、スタビリティーも高く、そしてセールエリアも大きい。セールエリアが大き過ぎるとコントロ ールが大変になるから、限度がある。安定性もほしいし、帆走性能もほしい、でもコントロールが難 しいのは困る。これらを全部考慮して、どこで落ち着くかがデザイナーの仕事だ。セールエリアを大 きくする為にジェノアを大きくする。でも、ファーラーが一般的だから、強風時に巻き取るにしても、 70%以下にまで巻き取るとセールカーブが出ないと言われる。それで、これも限度がある。あくま でショート又はシングルハンドでの事ですが、それならマストをちょっと高くして、ジブを小さくして、 コントロールしやすいメインセールを大きくするのが良いと思うのですが。船任せにすると、ある一定 条件が揃った時だけ、良い走りができるという事になり、コントロールする範囲を広くすると、それだけ 様々な状況に対応できる。良い走りの条件が広がるので、この方が面白い。 キールはまた、ヨットの横流れを防ぐ役目も担っている。これが良く無いと、自分では真っ直ぐ走って いるつもりでも、かなり風下に流されて、実際は斜めに走っているという事になる。これは非常に効率 が悪い。キールの側面の面積さえ広ければ、横流れを防ぐかというとそうはならない。レーサーを見る とキールが深い。のぼりを良くするにはキールが深い方が良い。でも、これもあまり深すぎては、座礁 の危険もある。キーるも様々なデザインがあるので、難しいが、キール形状をオプション的に選択できる のはウィングキールとか、バルブキールとかぐらいだから、吃水の浅い、深いで判断して、あとはバラスト 比を見れば充分じゃないかと思う。バラスト比が高くても、船体そのもののデザインが上部構造がでかい なら重心は上に行くし、すべては相対性という事になる。でも、バラスト比は高い方がいいし、船体自体 の重心も低い方が良い。バラストと船体とセール面積、これらをどうブレンドするかによって、乗ってる時 の感覚は全く異なってくる。デザイナーが何を狙ってデザインしたものかがそのヨットのコンセプトとなる。 重心が低い方が良いと言っているのは、シングルハンドで、セーリングを楽しむという次元での事であり、 セーリングはあまりしないなら、そんな事より、キャビンが広い方が良い。 キールの取り付けは船内のビルジ溜まりにキールボルトを貫通させて取りつけてある事が多い。幅の 狭いキールは抵抗が少ないが、取りつけが左右にボルトを通せないと横側の力には弱くなる。それに この設置部の強化は重要で、ちょっと当てたぐらいでキールが落ちるようなら問題ではないか。当てた本 人はぶつけたのだからと思うが、弱いのも考えものだ。 |