第85話 アレリオン28に見る進化

オリジナルデザインは1912年です。当時としては、最新鋭のデザインではありましたが、
今日の技術の発展に伴い、様々な技術や素材が開発され、アレリオンは進化してきました。
但し、今日一般的に見るヨットとは進化の方向性が異なります。

アレリオンの進化は実際にセーリングするという視点に置かれているという事です。今日の
一般的ヨットは、どちらかと言うと快適に住まう為、或いはより便利な操作性という面に重点
が置かれ、見た目で誰でもその恩恵が解り易い点に集中しています。例えば、典型的な例
はキャビンの大きさです。広いか狭いかは一目瞭然ですから、誰にでも理解できます。逆に、
目に見えない物はその犠牲になってきたとも言えます。全てはメリットとは反対にデメリットも
併せ持つものです。その両方を吟味して、採用するか否かを決定する必要があります。

アレリオンの進化はシングルハンドによるデイセーリングからウィークエンドセーリングという
コンセプトにあります。頑丈、高寿命、同時に重量軽減を図る為、ビニルエステル樹脂を使った
サンドイッチ構造を持つFRP製、デザインはオリジナルの美しさを活かすばかりか、クラシックデ
ザインが持つメリットをそのまま採用しています。前後のハングオーバー、スリムな幅、低い重
心、これらは、デッキをよりドライに保ち、波にソフトで、スタビリティーが高く、風圧面積も少ない
この事によってより安定した帆走、乗り心地の良さ、ボリューム感のある大きさに圧倒される事
無く、気軽にシングルハンドで出せる。一方、こういうメリットがある反面、キャビンの狭さが結果
として出てきます。そこで、デイセーラーというコンセプトに留まる事によって、キャビンより性能
重視としました。つまり、ショートクルージングにとって、住まうようなキャビンより性能優先の方
が重要であると判断したわけです。

キールはクラシックなヨットがロングキールであるのに対し、現代のフィンキールを採用していま
す。確かに、ロングキールのメリットはある。でも、フィンキールの性能は実証されてきましたし、
その操作性においても優れている。ショートセーリングに採用しない手は無いでしょう。ラダーは
バランスラダーとして軽く、機敏な性能を持ちます。ロングクルージングには鈍くても、多少、放
っておいてもいいぐらいが適当でしょうが、ショートクルージングではセーリングを楽しむのが第一
ですから、機敏な方が良い。つまり、水線から上はクラシックそのままに、水線から以下は新しい
デザインが採用されています。

リグを見てみます。アルミ製のフラクショナルリグです。最新のデザインが施されています。ここに
も、いかにセーリングするかという視点が施されています。小さなジブ、セルフタッキングシステム
ファーリングシステム、その代わり大きなメイン、フルバテン、ベアリング付きスライダーが採用さ
れています。ジブはメインほどには自由にコントロールしにくいものです。それに比べて、メインセー
ルはコントロールの幅が広い。そこで、思いきってジブを小さくして、しかもファーラーやセルフタッ
キングにして簡単にしてしまいました。反面、メインセールにはコントロールの楽しさを味わえる。
ジブと違ってフルバテンですし、ブームがあり、アウトホールがあり、トラックがある。自由度は高い
のです。ここでひとつ明記しなければなりませんが、セルフタッキングジブというのは上りは良いと
しても後ろからの風の場合はセールをうまく形作れなくなりますシートの引く位置に限定されるから
です。そこでアレリオンにはメインセールにブームがあるように、ジブセールにもブームがあったら
容易に理想的なセールカーブが造れる考えました。それも従来からあるジブブームでは無く、独自
の開発により回転するジブブーム(特許)です。これによって、あらゆる角度の風に、うまく対応でき
るようになりました。さらに言うなら、これにジェネカーを加えるならば最高に面白くなるでしょう。

シングルハンドですから、ティラーを持ったまま、全てのコントロールができるというのが必要です。
メインのトラックは舵より後部に配置されています。メインシートはそこからリードされ、コクピットの
バーニーポストに届きます。簡単に手が届く。ジブシートは1本だけ、勝手に右左と移動し、タッキ
ングも思いのままです。

エンジンはディーゼルインボード、シャフト式かセールドライブ、キャビンにはマリントイレと簡易な
ギャレー、アイスボックスが配置され、シングルからショートハンドでの2,3日程度のクルージング
には充分でしょう。

高いスタビリティーはブローにも楽ですし、そればかりかリーフせずに走れる範囲が多くなります。
この事hじゃせっかくの帆走の楽しさを犠牲にする事無く、楽に爽快な帆走を楽しめるという事です。
アレリオンは美しい姿はもちろんですが、クラシックなノスタルジーに浸る為では無く、より快適に
自由自在に、セーリングを楽しむという進化を追求して進化しているのです。



こういうクラシックヨットの進化が注目されてきました。アレリオンはその先陣を切りました。現在
では260艇が進水しいます。日本では、まだまだキャビン重視の傾向にあるようですが、ヨット
はセーリングを重視した方がいかに楽しいか、その実例と言えるでしょう。気軽に、自由自在に
ヨットを操って、セーリングできたらどんなに面白いか、想像できませんか?

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