第90話 沿岸(コースタル)

沿岸とは、まさしく文字通り、海岸線に沿ったクルージングです。日本一周もこれに当ります。
ウィークエンドセーリングより足をのばした長距離を時間をかけて走ります。港港に寄りながら
各地の探索もするでしょうし、うまい物食ったり、人とのふれあいもある。気に入ったら、そこに
数日泊まる事もあるだろうし、天候の具合によっては、出れない日々が続く事もある。とにかく
沿岸クルージングを楽しむ為には時間が必要です。それもゆったりした時間計画が必要とな
ります。

殆どの方々がそうですが、知らない港に入るとか言う場合、誰でも暗い夜は避けたいものです
ですから、昼間だけの走行、明るいうちに到着したいと思います。ヨットは風まかせですから、
時間の計画がうまくいかない。それに風向も問題です。都合良く風が吹いてくれれば良いので
すが、そうはとんやがおろさない。それでエンジンを使って、一定速度を確保、これで、明るい
うちに到着できる。沿岸クルージングのスタイルはこうなります。これはこれで良いでしょう。
エンジンをしっかり整備して、機走又は機帆走で旅を楽しむ。何が何でもセーリングだとこだわる
事は無い。沿岸クルージングは70、80%はエンジンで走る。そう割りきれば良い。

沿岸クルージングを一人でこなす人も居ますが、一般的には仲間や家族を誘う。そうすると、人数
に対して、艇の大きさが重要になってくる。どの程度の期間クルージングを続けるかによっても
異なりますが、長期間、狭いところに大人数ですと、ちょっと苦しくなる。だいたい長期間になれば
なるほど、一人では無いけども、大人数も無い。多くても、4,5人以下というのが普通ではないで
しょうか。そうすると、最大でも4,5人分のバースを確保すれば良い。こういう乗り方は帆走性能
というより、エンジンのパワーとキャビンの広さ、装備等が必要でしょう。一般的に皆さんが求めて
いるものです。

クルーがいますから、艇の大きさもでかくても良い。どうにでもなります。時化ても沿岸ですから、
何時間か我慢すれば、どこかに逃げ込める。それほどヨットに性能を要求する必要は無いかもし
れません。でも、重心が低いに越した事は無いのです。それに頑丈な船体は安心ですし、波に
柔らかいとか、波がデッキに上がりにくいとか、長い間クルージングしていくと、疲れ方が全く違っ
てきます。ここが矛盾する所があるんですね。キャビンを大きく取る為にフリーボードを高くする、
幅を広くする、オーバーハングを少なくする。こういうのは重心が高くなりますし、船底がフラットで
波に叩きやすくなり、デッキ上に波が上がりやすい。でも、限られたサイズでキャビンを確保しよう
とするなら、こういう条件がついてくる。どれも程々が良い。
沿岸のクルージングだからと言って、いつも長い期間出ているわけではありません。出ていない
時には、普段はどんな乗り方をするかとなります。つまり、やはりデイセーリングが日常の乗り方
になります。それで、コースタルとは、デイセーリングはもちろん、沿岸の長距離クルージングとし
たいと思います。

イタリアのコマー社のヨットは33フィートから大型艇までを建造する造船所ですが、この造船所の
ヨットはあくまで個人オーナー向けにヨット建造を行っています。様々なサイズがあるのですが、
ちゃんとジャンル分けをしており、スポーツ的にセーリングを楽しむモデル、或いは、外洋に行ける
モデルと分けています。

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