第五十二話 ビッグデイセーラー


      

もうひとつ、でかいのをご紹介します。昨今では、デイセーラーコンセプトでも、かなりでかいのがちらほら。アメリカのライマンモース社は、前にご紹介した48フィートデイセーラーに続き、65フィートのデイセーラーを建造中です。何故、デイセーラーと称しているかは、サイズに関係無く、コンセプトがデイセーラーなのです。

こんなにでかいヨットでも、部屋はひとつ。その他には部屋としては、メインサロンがあるだけです。遠くに行く必要は無い。家族や友人とセーリング。サイズは好みなのだろうが、結局、オーバーナイトやクルージングは重要では無い。それより、セーリングなのだそうだ。おっと、よく見ると、左舷に二段のバースがある。これ、オーナーが希望する場所へ回航してもらう為に作ったバースなんだそうです。つまり、回航屋さん専用。オーナーは、希望の回航先に飛行機で行って、その海域をセーリング。何と贅沢な考え方なんだろう。

クルージング艇なら、30フィートでも前後合わせて二部屋ある。デイセーラーならワンルームで、バースはひとつ。そして、でかいヨットでも、バースはひとつ。もちろん、このヨットには大きなギャレーもあれば、メインサロンもある。しかし、考え方として、もはやクルージング艇の様なレイアウトは要らない。

世界を回るヨットもたくさんあるし、別荘にしている人達も多い。しかし、もう、そういうのは必要無いという人達も少なく無いのです。無理矢理、個室をいくつも作ってしまうより、余裕にレイアウトされた方が、お洒落じゃないかと思います。まあ、それでも、こんなサイズが必要かどうかはそれぞれですが。

アメリカに行きますと、やたらでかいのがたくさんあって、50フィートや60フィートが、そう大きく感じられなくなる。ところが、それを日本に持ってきたら、こんなにでかかったか?という事もあります。向こうでは、サイズに感覚が麻痺してしまうので、65フィートデイセーラーなんて考えるのかもしれません。

結局、現代のデイセーラーコンセプトが生まれて久しいが、その考え方が徐々に浸透してきている。キャビン重視型から、セーリング重視、近場重視に変わってきている。これがクルージング艇なら、部屋を4つぐらいは作るだろう。そうじゃ無いんです。このサイズにおいても、オーナーの考え方はデイセーラーコンセプトとする人が出て来た。ここが重要な処です。クルー不要、家族みずいらず、セーリングと近場、みんなひっくるめてテーマは ”カジュアル” さを持つ事。その結果がデイセーラーになる。

サイズはそれぞれですが、小さなサイズは当然としても、こんなにでかいサイズでも、デイセーラーの考え方が支持されてきた。つまり、これはオーナーの意識が変化してきた証です。頭で考えれば、部屋がたくさんあった方が良さそうだし、快適に過ごせる装備もたくさんあった方が良さそうに思える。でも、現実のヨットライフになると、逆に、シンプルな方が良いじゃないか、という考え方への変化が現れてきた。サイズは兎も角、その考え方の変化に着目しています。もはや、小さいからデイセーラー、大きいから外洋クルージングなんて考えるわけじゃない。サイズでは無く、考え方です。

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